放射能の食品汚染はいつまで?少しの量でもガンに影響する?

放射能の食品汚染はいつまで?少しの量でもガンに影響する?写真は原子力発電所の煙突画像。

私が食の安全を意識しはじめたのは、2011年の福島原発事故がきっかけです。

事故で拡散された放射能で、原発周辺地域の食品は汚染されました。
さらに、その汚染された食品を食べると、体の中から被ばくする内部被ばくの危険があり、私たちの食生活は不安に包まれました。

しかし、原発事故が起こる前まで、食品に対する放射能の基準は、輸入食品にしか設定されていなかったのです。

そのため、政府は急きょ、食品に含まれる放射能に対して基準値を設定。
これによって、基準値以内の食品しか市場に流通しなくなり、汚染食品による内部被ばくの危険はなくなったように思えました。

しかし、なぜか不安な気持ちは消えません…。
というのも、放射能には発がん作用があり、その影響は大人よりも子どもの方が受けやすいと聞くからです。

はたして、基準値以内の食品であれば、がんへの影響はないのでしょうか?
また、大人と子どもの基準値が同じでも、子どもは大丈夫なのでしょうか?

食事は、毎日欠かせない大切なものです。
子どもが安心してご飯を食べられるように、放射能による食品汚染の現状や、体への影響について、不安な点を調べてみました。

放射能は、がんを発生させる

大量に浴びると命まで危ないと言われる放射能ですが、放射能は私たちの体にどう影響しているのでしょうか。
まずは、放射能が体に与える影響について見ていきましょう。

放射能は体の細胞を傷つけて、がんを発生させる

放射能が私たちに与える影響、それは細胞にあるDNAの破壊です。
私たちが放射能を浴びたり、汚染された食品を食べたりすると、細胞中のDNAが傷つけられます。

私たちが放射能を浴びたり、汚染された食品を食べたりすると、細胞中のDNAが傷つけられます。

そもそもDNAとは、細胞の中心にあり遺伝情報をまとめる重要なもの。
放射能はそのDNAを傷つけ、さらに体内に活性酸素を発生させて、私たちの体を攻撃します。

しかし、私たちの体には修復能力があるため、少しくらい放射能に攻撃されてもDNAを元に戻すことができます。
ところが放射能を大量に浴びると、修復作業が間に合わなくなり、ときには修復内容をまちがえて、DNAを上手に修復できなくなるのです。

また、大量のDNAが傷つけられたままだと、その細胞は死に、細胞があった臓器も機能しなくなるため、病気になり死んでしまう場合もあります。
広島や長崎の原爆投下により短時間で命を落とした人は、一度に多くの放射能を浴びたために、全身の細胞が破壊されたのです。

一方、修復ミスのDNAは異常細胞となり、がん細胞へと変わります。
この放射能による発がんリスクは、国際がん研究機関(IARC)において、最高ランクのグループ1(ヒトに対して発ガン性がある)に位置づけられています。

このように、放射能は私たちの体の基盤となる細胞を傷つけて、がんを発生させたり、最悪の場合は命まで奪います。
そして、この放射能の影響は、大人よりも子どもの方が強く受けるというのです。

なぜ、子どもは放射能の影響を受けやすい?

放射能は、細胞分裂が起こるときに体内に取り込まれやすい特徴があります。
そのため、大人よりも細胞分裂が活発な子どもの方が、放射能の影響を強く受けます。

また、私たちが生涯で最も細胞分裂が活発な時期は、お母さんのお腹の中にいる胎児期です。
それゆえ、妊娠中のお母さんをはじめ、乳幼児や成長途中の子どもたちは、できるだけ放射能を避ける方が安全といえます。

実際、チェルノブイリ原発事故では、5歳以下の子どもに甲状腺がんが多発しました。
このことから、福島県でも原発事故による影響を調べるため、県民健康調査をおこなっています。

その中でも甲状腺の検査は、事故当時18歳以下だった子どもたち約38万人を対象に実施。
そのうち、今までで131人ががんと診断されています。
ただし、福島県の検討委員会は、当時5歳以下だった子どもの発症例がないため、放射能の影響とは認めていません。

ところが2016年6月6日、事故当時5歳だった子どもの1人に甲状腺がんの疑いがあることが明らかになったのです。
しかし、今も福島県の検討委員会は、今回の1例だけでは放射能の影響とは判断できないとしています。

ちなみに、チェルノブイリ原発事故では、当時5歳以下の子どもが甲状腺がんを発症したのは、事故から7~8年経過した後でした。
放射能汚染の影響は、これから明らかになるのかもしれません。

また、さまざまな種類のがんがある中で、甲状腺がんが多発している理由は、放射能の性質が関係しています。
放射能は種類によって、体に溜まりやすい場所に違いがあるのです。

放射能の溜まりやすい場所が、がんになる

放射能は、種類によって体に溜まりやすい場所が違います。
福島原発事故では、主に4種類の放射能が拡散されました。

では、福島原発事故で拡散された放射能と、体に溜まりやすい場所をチェックしていきましょう。

【福島原発事故の放射能の種類と、蓄積しやすい体の場所】

(ヨウ素131)甲状腺
(セシウム134)全身の筋肉
(セシウム137)全身の筋肉
(ストロンチウム90)骨

福島原発事故の放射能の種類と、蓄積しやすい体の場所

まずヨウ素131は、のどにある甲状腺に溜まりやすい性質があり、甲状腺がんを引き起こします。
福島原発事故やチェルノブイリ原発事故で、甲状腺がんが多発している原因は、このヨウ素131によるものです。

次にセシウム134とセシウム137は、全身の筋肉に蓄積します。
そしてストロンチウム90は骨に溜まりやすく、一度骨に蓄積するとなかなか体外に排出されません。
骨や血液をつくる骨髄を攻撃し、骨肉腫や白血病などを引き起こします。

また、放射能の一部は排泄物と一緒に体外へ排出されるため、排泄機能に関わる腎臓や膀胱などの発がんリスクが高くなります。

このように、放射能は蓄積しやすい体の部分に、ガンを発生させる恐れがあります。
しかし、私たちの周りには原発事故が起こる前から、放射能はたくさん存在しているのです。

食品だけじゃない、私たちの周りにある放射能

私たちは、宇宙や大地から放出される自然放射や、病院で受けるX線などで、放射能を毎日受けています。
また食品にも、もともと微量の放射能が含まれています。

そのため、私たちは自然由来のものだけで、年間2.1ミリシーベルト(人に影響を与える単位)の放射能を受けているのです。

そのため、私たちは自然由来のものだけで、年間2.1ミリシーベルト(人に影響を与える単位)の放射能を受けているのです。

さらに、健康診断等で受ける胸のX線は、1回0.06ミリシーベルト。
頭部や全身を撮るCTは、1回2.4~30ミリシーベルトと、1度でかなりの放射能を受けます。
日本は世界の中でも、医療被ばく量が多いとされ、その年間総量はおよそ3.8ミリシーベルトと考えられています。(世界平均0.6ミリシーベルト)

ということは、私たちは毎日受ける放射能によって、発がんリスクが高まっているのではと不安になります。
では、どの位の放射能を受けると、がんに影響するのでしょうか。

放射能の発がんリスクは、100ミリシーベルト以下でも発生する

ICRP(国際放射線防護委員会)では、一生涯かけて受けた放射能の量が100ミリシーベルトを超えると、その後、放射能の量が増えるとともに発がんリスクも上がることが分かっています。

しかし100ミリシーベルトを超えたから、すぐにがんが発生する訳ではなく、発がんリスクと関連付けられるのが、100ミリシーベルト以上からということ。

また、この100ミリシーベルトには先ほどお話した自然から受ける放射能や、医療被ばくの量は含まれません。
原発事故によって放射能に汚染された食品の量だけで、100ミリシーベルト以上と設定されています。

原発事故によって放射能に汚染された食品の量だけで、100ミリシーベルト以上と設定されています。引用元:放射線被ばく早見図

しかし一方では、放射能の量が100ミリシーベルト以下でも、がん(特に白血病)のリスクが発生するという研究データも発表されています。

この研究はIARC(国際がん研究所期間)などのチームが、放射能と人への影響を分析するために、アメリカの原子力施設で働く30万人以上の健康状態を調べたものです。

その結果は、放射能の被ばくに関係なく白血病になるリスクが1とするなら、放射能の量が1ミリシーベルト増えるごとに、0.3%リスクが高くなるというものでした。

今まで、100ミリシーベルト以下の放射能は、発がんリスクに影響しないと考えられていましたが、この研究結果によって、微量の放射能でも発がんリスクはあることが分かったのです。

ただし、リスクの上昇率は低いため、放射能による発がんリスクは、ICRP(国際放射線防護委員会)が勧告している100ミリシーベルト以上で、一般的には考えられています。

では、原発事故によって汚染された食品から、私たちはどの程度の放射能を受けることになったのでしょうか。

食品中の放射能の基準値

原発事故が起こる以前は、食品に対する放射能の基準は輸入食品にしか設定されていませんでした。
しかし、原発事故の影響により、日本国内の食品にも放射能汚染の危険が迫ったため、厚生労働省は2011年3月17日に、下記の暫定規制値を導入したのです。

放射性セシウムの暫定規制値(2012年3月末まで適用)

食品群規制値(ベクレル/kg)
飲料水200
牛乳・乳製品200
野菜類500
穀類500
肉・卵・魚
その他
500

ベクレル(Bq)…放射能の強さの単位
シーベルト(Sv)…人への影響の大きさ

同じベクレルの数であっても、放射能の種類によって人への影響度は変わります。
そのため、放射能に汚染された食品の単位はベクレルで、その食品を食べた人が内部被ばくする大きさをシーベルトで表します。

また、上記の規制値は、放射性ストロンチウムも含む数値です。

先ほどお話したように、発がんリスクの発生は100ミリシーベルト以上です。

この上記の暫定規制値は、表にある全ての食品を1年間毎日食べ続けると、年間に受ける放射能の量は最大5ミリシーベルトになるように計算されています。
最大値の5ミリシーベルトをその後も受け続けると、たった20年で発がんリスクがある100ミリシーベルトに達してしまいます。

もっと低い数値でなければ危険な気がしますが、事故直後は食品を汚染する放射能の量も多く、この暫定規制値はあくまで緊急用として設定されたのです。

そして、原発事故から約1年後の2012年4月1日。
現在も適用されている、新基準値へと変更されました。

大幅に下げられた、放射性セシウムの新基準値

新基準値の内容は、暫定規制値の数値を大幅に下げたものでした。

放射性セシウムの新基準値(2012年4月1日から適用)

食品群基準値(ベクレル/kg)
飲料水10
牛乳50
一般食品100
乳児用食品50

※Bq(ベクレル)…放射能の強さの単位
※放射性ストロンチウム、プルトニウムなども含めた基準値

新基準値では、今まで200ベクレルまで許されていた飲料水や牛乳を含む乳製品を、それぞれ10ベクレルと50ベクレルにまで引き下げました。

また500ベクレルで設定されていた、野菜、穀類、肉、魚などは、一般食品として一括表示となり100ベクレルに引き下げられます。
さらに別項目として、乳児用食品が新たに追加されたのです。

前の暫定規制値は、人への影響の大きさを年間5ミリシーベルトで設定されていましたが、新基準値は年間1ミリシーベルトに引き下げられました。

そのため、暫定規制値の年間5ミリシーベルトでは20年後に100ミリシーベルトに達する恐れがありましたが、新基準値ではその不安は解消されたのです。

また、新基準値を導入した理由は2つあります。
1つは、食品の国際的な基準を定めるコーデックス委員会が、食品から受ける放射能の量を、年間1ミリシーベルトまでと設定しているため。
2つ目は、時間が経過したことで、食品の汚染濃度が低くなったからです。

じつはICRP(国際放射線防護委員会)でも、一般人の1年間に許容できる放射能の量は1ミリシーベルトまでと勧告しています。

ちなみに、食品によって基準値に差があるのは、摂取量が関係しています。
水は生活に欠かせないものであり、料理に使用するなど摂取量も多いため、最も数値の低い10ベクレルに設定されています。

そして、放射能の影響を受けやすい子どもが、比較的よく摂取する牛乳と乳児用食品を50ベクレルに定めたのです。

世界の基準値と比べる

世界の基準値と比べる

新基準値の数値は、一般食品が50%-それ以外の食品(飲料水・牛乳・乳幼児食品)は100%汚染されていると仮定して、計算されたものです。
では、この基準は厳しいものなのか、世界の基準値と比べてみましょう。

まず、アメリカは食品中の30%が汚染されていると仮定して、どの食品も1200ベクレル/kgまで許容しています。
そのため、人の影響度は最大で年間5ミリシーベルトの設定です。

また、EUは日本と同じく年間1ミリシーベルトの基準値ですが、食品中の10%しか汚染されていないと仮定しています。
それにより、食品の基準値は400~1250ベクレル/kgまで許容されるため、日本よりも高い数値が認められています。

一方、チェルノブイリ原発事故のあったウクライナ(事故当時ソビエト連邦)や隣国のベラルーシの基準値は、日本よりも厳しいものが一部あります。

それは、飲料水や乳児用食品などです。

日本は、飲料水の基準値を10ベクレル/kgと設定していますが、ウクライナは2ベクレル/kgと、かなり厳しく設定。(ベラルーシは日本と同じ10ベクレル/kg)

日本は、飲料水の基準値を10ベクレル/kgと設定していますが、ウクライナは2ベクレル/kgと、かなり厳しく設定。(ベラルーシは日本と同じ10ベクレル/kg)

また乳幼児食品の基準値は、日本の50ベクレル/kgに比べて、ウクライナは40ベクレル/kg、ベラルーシは37ベクレル/kgと、放射能の影響を受けやすい子どもへの警戒を強めています。

たしかに、アメリカやEUと比べると、日本の基準値は厳しいです。
しかし、福島原発事故はチェルノブイリ原発事故と同じレベル7(国際原子力事象評価尺度)とされているため、他国よりも厳しくするのは当然といえます。

では、実際どのくらいの数値が出ているのか、放射能の検査データをチェックしてみましょう。

放射能の検査データをチェック

原子力災害対策本部によって、食品の放射能検査の対象とされているのは、福島県をはじめ次の17都県です。(青森、岩手、秋田、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡)

また、検査は各自治体でおこなわれ、対象にない地域の食品も自主的におこなっている所もあります。
そして、検査結果はすべて厚生労働省でまとめられ、公表されています。

【食品中の放射性物質の検査結果について】(厚生労働省 2016年5月23日付)参照元:厚生労働省-食品中の放射性物質の検査結果

※表の結果欄に表示されている<20などは、その食品において放射能の検出できる最小の数値を表しています。
<20と記されていれば、それ以下の数値で検出できなかったということです。

上記の検査で、基準値を超えたものは6件でした。
宮城県産4件…タラの芽、コシアブラ、イノシシ肉
山形県産1件…コシアブラ(山菜の一種)
長野県産1件…コシアブラ

また、食品ごとに月別でも詳細を確認できます。

【農産物の検査結果】
参照元:農林水産省ホームページ-農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査結果

【畜産物の検査結果】
参照元:農林水産省ホームページ-畜産物中の放射性物質の検査結果について

【水産物の検査結果
参照元:水産省ホームページ-水産物の放射性物質調査の結果について

以上の検査データを見ると、基準値を超えているものは少なく、ほとんどが検出できる最小の数値以下です。
また基準値を超えるものは出荷されないので、私たちが手に取る食品は安全といえます。

放射能検査は、ごく一部の食品だけ

しかし、不安な点が1点あります。
それは放射能検査を受ける食品は、ごく一部だということです。

じつは、食品中の放射能を調べるには、食品を細かく刻む必要があります。
そのため、検査に回された食品は販売できなくなるので、すべての食品を検査することは現実的に不可能なのです。

そのため、検査に回された食品は販売できなくなるので、すべての食品を検査することは現実的に不可能なのです。

そこで過去の検査結果から、基準値を超えた食品は3検体以上、基準値の1/2以上の数値だった食品は1検体以上など、地域や食品によって検査に必要な数が決められています。
※一部の地域は、お米を全量検査しています。

また、土に沈着した放射能を吸収しやすい自生の山菜やきのこ、放射能の排泄力が弱い川魚、汚染された木の実などを食べるイノシシなどは、放射能汚染の危険が高いと考えられ、今も流通を止められている食品もあります。

【出荷制限のかかった食品】(厚生労働省2016年5月18日付)
厚生労働省:食品に関する出荷制限等pdf

基準値を超える食品は年々減少し、ほとんどが検出できる最小の数値よりも低いので、検査の数が1~3検体と少なくても問題ないのかもしれません。

しかし、放射能の汚染濃度は均一ではなく、同じ地域でもある場所だけ濃度が上がるホットスポットもあります。
そのことを考えると、すべての食品を検査できないため、絶対安全と言い切れないのも事実です。

子どもが食べる給食は、安全?

また、大人よりも放射能の影響を受けやすい子どもたちの給食でも、検査はおこなわれています。
給食も各自治体によって、今も検査が続けられています。
全国の検査結果は、下記-消費者庁のページで見ることができます。

【全国の放射能検査】
参照元:消費者庁ホームページ-食品等の放射能測定

検査機器や食品ごとに検出できる最小の数値は変わるため、函館市や京都市など一部の市町村では、国の設定する基準値よりも低い基準値を独自に設定しているところもあります。

検査結果は、どこも不検出(検出できる最小の数値以下)で、ひとまず安心です。
しかし、検査機器や食品ごとに検出できる最小の数値は変わるため、函館市や京都市など一部の市町村では、国の設定する基準値よりも低い基準値を独自に設定しているところもあります。

では、放射能による食品汚染は、いつまで続くのでしょうか。

放射能の心配は、いつまで続く?

放射能の検査結果を見ても分かるように、放射能はどんどん減少しています。
しかし、完全になくなるまでは、まだまだ時間が必要です。

また、放射能は種類ごとに減る速度はさまざま。
その速度は、放射能が半分に減るまでにかかる時間(半減期)で表すことができます。

半減期は、放射能を取り巻く状況に合わせて、物理的半減期、生物学的半減期、実効半減期の下記3タイプで、考えられています。

半減期は、放射能を取り巻く状況に合わせて、物理的半減期、生物学的半減期、実効半減期の下記3タイプで、考えられています。引用元:放射線・放射能・食品中の放射性物質問題についてのQ&A

(物理的半減期)周りの環境に影響されず、放射能自体にある半減速度

(生物学的半減期)人の体内での半減速度
排泄や代謝機能によって、体外に排出されるまでにかかる時間

(実効半減期)実際に私たちの体内に放射能が入ったときの半減速度
物理的半減期と生物学的半減期の2つの影響が掛け合わされた時間

放射能の種類による半減期

放射能の種類ヨウ素131セシウム134セシウム137ストロンチウム90
物理的半減期8日2年30年29年
生物学的半減期80日90日90日50年
実効半減期約7日約80日約90日約20年
蓄積する体の器官甲状腺全身の筋肉全身の筋肉

上の表を見ると、今回の事故で拡散された放射能には、半分に減るまでに30年かかるものがあります。
しかも30年経って、やっと半分です。
ということは、放射能の心配はまだまだ終わりません。

しかし、ただ時間が過ぎるのを待つだけでなく、放射能による食品汚染は私たち自身でも減らすことができるのです。

お家でできる、放射能を減らす方法

放射能に汚染された食品は、私たちの手で減らすことができます。
まずは、放射能が溜まりやすい場所を知り、その次に放射能の減らし方を確認していきましょう。

放射能は、地表のすぐ下に溜まっている

放射能は、地表のすぐ下に溜まっている

原発事故の直後、大気中に放出された放射能は、雨のように大地に降りそそぎました。
そのため事故直後は、地表で育つ葉物野菜の表面に、放射能が多く溜まったのです。

その後、放射能はどんどん土壌に沈着し、大地を汚染。
すると、土壌に沈着した放射能は、水分や栄養と一緒に作物に吸収されて、作物内部に蓄積します。

また、今回の原発事故で放出された放射能は、地表から5cmくらいの場所に溜まりやすい傾向がありました。
そのため、ほうれん草などの地表近くに根を張る葉物野菜が、放射能を多く吸収して汚染の影響を受けやすくなっています。

その他の-土中に根を張る根菜類や、イモ類はというと…
地中に伸びていく部分よりも、地表に出る葉や茎の部分に放射能は蓄積します。
また、大根やジャガイモなどに付着した土の中にも、放射能が含まれている場合があります。

ちなみに、ハウス栽培に関しては、土壌汚染の影響が比較的少ないため、安心です。
しかし、事故当時やその直後に、ハウスの入り口が開いていれば、土壌汚染の危険は高まります。
他にも、山で自生しているキノコや山菜は、土壌汚染の影響が強く、注意が必要です。

【放射能の食品汚染の注意点】

  • 地表近くに根を張る葉物野菜(ほうれん草、小松菜など)は、放射能が溜まりやすい
  • 大根やにんじんなどの根菜類は、土に埋まっている部分より、茎や葉に注意
  • きのこ類は放射能を吸収しやすい、自生のものは食べない
  • ハウス栽培は、比較的安全

では、作物が吸収した放射能は、どうやって減らすことができるのでしょうか。

放射能の減らし方

まず、放射能は加熱しても消えません。
しかし、食品中の放射能は洗ったり茹でたりすることで流れ出るため、除去のひと手間を加えるだけで、食品中の放射能を30%~90%も減らせることがわかっています。

しかし、食品中の放射能は洗ったり茹でたりすることで流れ出るため、除去のひと手間を加えるだけで、食品中の放射能を30%~90%も減らせることがわかっています。

そのため、どの食品もまず、しっかり水洗いすること。
そして、ゆがいたり、塩水や酢水につけたりして、放射能を減らします。

また、洗う場合は水よりもお湯の方が除去率は高く、ゆがく時間は短時間で問題ありません。
塩水の塩はひとつまみ、酢水は小さじ1~大さじ1杯ほどの量で十分です。
食品の量に合わせて、加減してくださいね。

では、食品のグループごとに、詳しい除去方法を見ていきましょう。

【葉物野菜】

葉物野菜

葉物野菜はしっかり水洗いした後に、数十秒ゆがくだけで、放射能を50%以上も除去できます。
キャベツやレタスなどは、1番外側の葉は捨てる方が安全です。

そして、調理方法に関係なくサッと湯がくようにしましょう。
その際、使用したお湯は捨てること。
この茹で汁に、放射能が流れ出ています。

また、レタスなど生で食べたい葉物野菜は、酢水に15分漬けると放射能が30~60%減らせます。

ちなみに、葉物野菜ではありませんが、玉ねぎもゆがいてから使う方が安心です。
生で食べる新玉ねぎは、よく洗って水にさらしてから食べましょう。

【ナス・ピーマン・トマト・きゅうり】

この4種類の食品は、塩水や酢水に漬けて除去します。 ナスやピーマンはヘタを切り落とし、ナスは塩水に30分、ピーマンは酢水に15分漬けます。

この4種類の食品は、塩水や酢水に漬けて除去します。
ナスやピーマンはヘタを切り落とし、ナスは塩水に30分、ピーマンは酢水に15分漬けます。

きゅうりも塩水に30分さらしても効果がありますが、酢漬けにすると90%以上も除去できるのでオススメです。
トマトは30分塩水に漬けるか、茹でて皮をむいても効果的です。

【根菜類】

根菜類

大根やにんじんは、土が付着していれば、しっかり落とします。
その後、皮をむいて茹でます。
根菜類の葉や茎には放射能が溜まりやすいので、できれば捨てるか、しっかり洗い茹でてから使いましょう。

ジャガイモやサツマイモも、しっかり土を落とし、皮をむいて茹でます。
サツマイモは、ひげ根を取ることを忘れずに。

ちなみに、一部のジャガイモは発芽防止のために、放射能が当てられているものがあります。
ジャガイモに放射能を当てても透過するため、害はないとされていますが、消費者が持つイメージが悪く、日本では北海道の1施設でしかおこなわれていません。

また照射されたジャガイモは、その旨を袋に記すように決められています。
生産数も少なく、ほとんど見かけることはありませんが、気になる方は袋を確認するようにしましょう。

【きのこ類】

きのこ類

一般的にきのこは洗わず使用しますが、放射能がつきやすいため、しっかり洗いましょう。
しいたけなど原木で栽培されるきのこは、さらによく茹でると安心です。

干ししいたけは、乾燥とともに放射能が濃縮されるため、戻し汁にはその放射能が流れ出ることになります。
しかし、戻し汁を捨てると、干ししいたけの旨味も捨ててしまうということに…。

そのため、干ししいたけはよく洗った後、はじめの戻し汁は捨て、新しい水で戻したものを使用するようにしましょう。

【果物】

果物は、皮をむいて食べるものがほとんどです。 しっかり水洗いして皮をむけば、50%以上除去できます。

果物は、皮をむいて食べるものがほとんどです。
しっかり水洗いして皮をむけば、50%以上除去できます。

ただし、イチゴなど皮をむけないものは、ヘタを取ってからよく洗います。
ブドウは口に含まず、手で皮をむいてから食べましょう。

【米・小麦】

お米は玄米を精米する行程で、60%以上除去されます。

お米は玄米を精米する行程で、60%以上除去されます。
さらに、お米を研ぐときにも流れ出るので、特別なにかをする必要はありません。
無洗米は、軽く研いだ方が安心です。

小麦粉は約85%が輸入品で、国産は少なく汚染の心配は少ないです。
また、加工行程で除去され、麺類などは茹でてから食べるため、問題ありません。

【肉】

肉も野菜と同じく、できれば軽くゆがきましょう。

肉も野菜と同じく、できれば軽くゆがきましょう。
また、ゆがくより効果は低くなりますが、塩を振って焼いても除去できます。
その場合は、しっかり焼くほうが効果は上がります。

他にも、酢漬けやタレに漬けて除去する方法もありますが、その場合は必ず、漬け汁は捨てましょう。

ちなみに、動物も私たちと同じように、食べものによって内部被曝の影響を受けます。
そのため今回の原発事故では、汚染された稲わらを食べた牛から放射能が検出されることがありました。
家畜が何を食べて育てられたか確認することも、放射能を遠ざける予防のひとつです。

【乳製品・卵】

牛肉と同じく、牛乳からも高濃度の放射能が検出されたことがありましたが、これも汚染されたエサの影響です。

牛肉と同じく、牛乳からも高濃度の放射能が検出されたことがありましたが、これも汚染されたエサの影響です。
肉と同じく、飼育環境をしっかりチェックしましょう。

また、チーズやバターなどの乳製品は、加工中に80~90%の放射能が取り除かれます。
ヨーグルトも加工時に60%ほど除去されますが、上澄みに溜まる水分(乳清)に放射能は溜まりやすいため、気になる人は捨てて食べると安心です。

卵は、鶏舎で飼育されるブロイラーよりも、外で放し飼いの鶏の方が影響を受けやすいです。
肉と同じく、飼育環境やエサの内容を確認しましょう。

【魚】

魚や貝類も他の食品と同じく、水洗いすること。

魚や貝類も他の食品と同じく、水洗いすること。
スーパーに並んでいるお刺身などは、加工時にすでに水洗いされていますが、家でもサッと洗えば、より安心です。
水洗いしたあとは、しっかり水分を拭き取りましょう。

煮魚を調理する場合は、熱湯をかければ、放射能と一緒に臭みを取ることができます。
また魚は、身と骨に放射能が溜まる危険性があります。
そのため、骨は食べないことが原則。

それ以外の除去方法は肉と同じく、酢やタレに漬けるのも効果的です。
その際は、漬けダレは捨てることを忘れずに。

また、貝は塩水で砂抜きをします。
塩には除去効果があるので、しっかり砂抜きをおこない、貝はこすり洗いしましょう。

以上のような方法を実践すれば、食品に含まれる放射能は自分で減らせます。
また放射能だけでなく、食品に残った農薬も一緒に落とせます。

そして、ここに書かれていない食品も、基本は水洗い後、ゆがくことで放射能除去が可能。
さらに、除去効果のある酢や塩で下ごしらえをすれば、より安心です。

これで、お家のご飯は安心して食べられます。
では、コンビニやファミレスなどの外食産業では、何か特別な対応を取っているのでしょうか。
最後に、コンビニや飲食店の放射能対策について、見ていきましょう。

ファミレスやコンビニなど、飲食店の放射能対策は?

ファミレスやコンビニなど、飲食店の放射能対策は?

そもそも、スーパーの食品は産地表示されていますが、お弁当屋さんや飲食店は産地表示すらありません。
また表示がある場合も、魚沼産コシヒカリや京野菜など、売り文句となるブランド食品だけで、全メニューの産地は分からないのが現状です。

じつは、外食産業は扱う食品が多く、気候の影響によって産地の変動も変わることから、産地表示は義務化されていません。

では、放射能汚染に関しては、何か対策をしているのでしょうか。
全国チェーンのファミレスやコンビニ、弁当屋など、大手の外食産業30社を調べてみると、独自に放射能検査をおこなっている企業は、下記の3社だけでした。

(株式会社ゼンショーHD)
参照元:株式会社ゼンショー-放射線に関するQ&A

(カッパ・クリエイト)
参照元:カッパ・クリエイト-

(幸楽苑)
参照元:幸楽苑ホームページー-原材料の品質管理

他の企業は、産地情報を掲載している所は多かったのですが、放射能対策に関しては何も表示がありませんでした。

そもそも、市場に流通している食品は、放射能の基準値以内のものだけです。
もちろん、スーパーや飲食店などの業種に関係なく、流通している食品はどれも基準値以内の材料で作られています。

また、国産の食品はスーパーに流通する割合が高く、外食産業は国産よりも輸入食品の使用率が高くなります。
そのため、特別な対策を取らない企業も多いのかもしれません。

しかし、自分で食材を選び、放射能を落とした家庭のご飯より、安心面は劣ります。

まとめ

放射能による食品汚染は、まだ終わっていません。
しかし、汚染濃度の高い食品は流通していないため、私たちが口にする食品は安全とされています。

ですが、発がんリスクは1ミリシーベルトでもあるという研究結果もあります。
そして、大人よりも子どもの方が放射能の影響を受けやすいという事実。
結局は自分がどう思うかで、答えは変わります。

しかし、気にし過ぎといわれても、私は放射能の摂取を少しでも減らしたいです。
子どものためにも、減らせるリスクなら少しでも減らして、安心できる方を選びたいのです。

注)放射能を表す言葉は、放射能、放射線、放射性物質の3種類あります。
ここでは分かりやすくするため、放射能という言葉を共通用語として使用しています。

放射性物質と放射能、放射線

引用元:放射性物質と放射能、放射線

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