産地表示のない食品は危険?産地表示がある食品とない食品は何がちがう?

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産地表示のない食品は危険?産地表示がある食品とない食品は何がちがう?

食品を購入する決め手として、産地を重視する人も多いはず。
ただ、産地が表示されていない食品もたくさんあります。

その理由は、食品によって産地表示の義務があるものと無いものがあるから。
そのため産地表示のない食品では、外国産の食品が含まれていても私たちは確認することができません。

そのうえ、実際に産地表示のない食品には、外国産の食材が多く使用されているといいます。

そこで、食品の産地表示について調べてみました。
産地表示の有無や、原産国と原料産地のちがいについて、確認していきましょう。

ほとんどの加工食品は、産地表示の義務がない

ほとんどの加工食品は、産地表示の義務がない

食品の産地表示の基準は、食品の種類によってちがいます。
野菜や肉、魚などの生鮮食品はすべて、産地表示が義務づけられています。

ただし生鮮食品であっても、野菜などを生産した畑の前で消費者に直接販売する場合は、産地表示の義務はありません。

一方、菓子類や調味料、レトルト食品などの加工食品は、ごく一部の食品にしか産地表示は義務づけられていません。

そのため多くの加工食品は、生鮮食品のように産地を確認しながら購入を検討することができず、私たちは原料の産地が分からないまま摂取することになるのです。

どうして、すべての加工食品に産地表示が義務づけられていないのでしょうか?

加工食品は産地表示がしにくい

加工食品は産地表示がしにくい

すべての加工食品に産地表示が義務づけられていない理由は、加工食品は産地表示がしにくいから。

その原因は2つあります。
それは、「加工食品の産地がいつも同じではないこと」と「原料の産地が特定できない食品があること」です。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

まず多くの加工食品は、原料の調達先がいつも同じ地域や国ではありません。

これは1年中安定して原料を調達するため。

原料に使用する野菜や果物には、収穫時期が限定されている食品があります。
また、天候や作物の病気などの影響によって収穫率が下がる場合もあり、いつも同じ量を調達できるとは限りません。

そのため原料の調達先を1箇所に固定せず、さまざまな国や地域から仕入れることで季節や天候などの影響を受けないようにしているのです。

そのため原料の調達先を1箇所に固定せず、さまざまな国や地域から仕入れることで季節や天候などの影響を受けないようにしているのです。

ですから、同じ加工食品でも季節によって原料の産地が変わります。

なお、それに合わせて商品の表示内容を変更すれば、メーカーは大きな負担を抱えることに。
手間やコストも掛かるので、商品が値上がりすることも考えられます。

2つ
目の原因は、加工食品の原料には産地が確認できない食品があることです。

例えば、チョコレートは原料の産地を確認しにくい食品の1つ。
チョコレートの原料はカカオですが、使用するカカオの産地が1ヶ国ではない場合があります。

日本にカカオを輸入してチョコレートを製造する場合であれば、複数の国のカカオを使用しても産地は確認できます。

しかし、海外で製造されたチョコレートを輸入する場合は、輸入先がカカオの産地を管理していない限り、どこの国のカカオが原料なのか産地を特定できません。

このように、加工食品には産地を表示することが困難な食品がたくさんあります。
そのため加工食品は、一部の食品にしか産地表示が義務づけられていないのです。

では、産地表示が義務づけられている加工食品には、どんな食品があるか見ていきましょう。

加工食品の産地表示はあやふや

産地表示が義務づけられている加工食品は、干し椎茸や切り干し大根、カット野菜、味付け肉、魚の干物、梅干し、漬物など、合計26食品群。
※参考資料 

原料の品質が加工食品の品質に大きく反映するものが、産地表示の対象となっているため生鮮食品に近いものが多く、レトルト食品などの調理加工済み食品は含まれていません。

原料の品質が加工食品の品質に大きく反映するものが、産地表示の対象となっているため生鮮食品に近いものが多く、レトルト食品などの調理加工済み食品は含まれていません。 ただし26食品群であっても、産地の表示義務があるのは加工食品の原料に対する割合が50%を超えたときだけ。

ただし26食品群であっても、産地の表示義務があるのは加工食品の原料に対する割合が50%を超えたときだけ。

原料に対する割合が49%以下の場合は、26食品群の食品であっても産地を表示しなくて良いのです。

タレ漬けした調味肉の盛り合わせを例として見てみましょう。

タレ漬けした調味肉の盛り合わせの中身が、国産の牛肉60%・アメリカ産の豚肉40%場合、産地表示の義務があるのは原料の50%以上を占める国産の牛肉だけ。

タレ漬けした調味肉の盛り合わせの中身が、国産の牛肉60%・アメリカ産の豚肉40%場合、産地表示の義務があるのは原料の50%以上を占める国産の牛肉だけ。

アメリカ産の豚肉は、原料の50%未満なので産地表示の対象外となるのです。

このように加工食品の産地表示の基準は低く、参考にならないのが現状です。

ちなみに、例のように国産と外国産の肉を盛り合わせた商品の中には、「国産牛肉使用」と大きく表示されている場合もあり、すべての肉が国産だと勘違いしやすいケースもあります。

加工食品の原料は1つではないので、表示されている産地がどの食品に対するものか、しっかり確認するように注意しましょう。

原産国と原料産地のちがいは?

原産国と原料産地のちがいは?

また、原料の産地と誤解しやすい「原産国」にも注意が必要です。

加工食品の原料表示欄を見ると、原料の産地ではなく「原産国:日本」と表示されている商品があります。

原産国も原料の産地(原料産地)と同じ意味だと思いがちですが、原産国と原料産地では意味がまったく違います。

原料産地が加工食品に使用される食品の生産場所を示しているのに対して、原産国は最終加工地のこと。

原料産地が加工食品に使用される食品の生産場所を示しているのに対して、原産国は最終加工地のこと。

仕上げの味付けや箱詰めなどをおこなった場所のことであって、原料の食品が生産された場所ではありません。

なお、加工食品は一部の食品にしか産地表示の義務がないので、原産国だけを表示しているものがほとんどです。

原産国が日本と表示されていても、原料に使用されている食品の産地は国内でない可能性もあるので、勘違いしないように注意しましょう。

そもそも加工食品に外国産の食材が多い理由は、日本の自給率が低いことが大きな原因です。

日本の食料自給率は、カロリーベース(1日に必要な1人あたりの熱量)で計算すると、わずか39%。
残り61%分の食料を海外から輸入しています。

日本の食料自給率は、カロリーベース(1日に必要な1人あたりの熱量)で計算すると、わずか39%。 残り61%分の食料を海外から輸入しています。

そのため、日本に流通する食品の半数以上が外国産。
しかし日本人は国産の食品を好む傾向が強く、海外特有の食材以外は国産を選びたいと思っている人が大多数です。

そのためスーパーで販売されている、野菜や肉、魚、米など産地の表示義務がある生鮮食品は、ほとんどが国産。
一部、 外国産の食品も扱われていますが、圧倒的に国産の食品が多く取り扱われています。

そして大量に輸入された外国産の食品は、産地表示の基準が低い加工食品や産地表示の義務がない外食産業に使用されるのです。

そこで、生鮮食品と同じようにすべての加工食品にも産地表示を義務づけようと、政府がやっと動き始めたのですが、そこにも問題があるようです。

国産又はアメリカ産又はその他って、結局どこ?

国産又はアメリカ産又はその他って、結局どこ?

2016年11月29日、消費者庁と農林水産省により、すべての加工食品に原料の産地表示を義務づける方針が決定されました。

これはTPP対策として、国産食品の消費量を増やすことが目的で考えられたもの。

日本人は外国産よりも国産の食品を好む傾向が強いため、すべての食品に産地を表示することで国産食品の消費率を増やすのが狙いです。

新たに考えられている加工食品の産地表示の内容は、まず生鮮食品と同じようにすべての加工食品に産地表示を義務づけること。

加工食品の産地表示は一部の食品だけが対象となっていますが、今後はすべての加工食品に産地表示を義務づけることにしたのです。

また原料に対する割合が50%未満の食品は、産地表示が除外されていましたがその制度も廃止。
原料の中で最も多く含まれている食品の産地を表示し、産地が複数ある場合は重量順に表示することとしたのです。

ただ、これまでにお伝えしたとおり、加工食品は原料の産地が一定でなかったり、産地を特定できない食品があります。

そこで、例外表示として3つの案が考えられました。
その3つとは、「可能性表示」・「大くくり表示」・「製造地表示」です。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

1.可能性表示

可能性表示とは、原料の調達先が数カ所あり、時期によって調達先が変更する食品に適用されます。

加工食品は1年中安定して供給するため、調達先が数カ所ある場合があります。
ただ、調達先が変わるたびに表示内容を変更するのは困難なため、あらかじめ調達する可能性がある産地を表示しておくというのです。

表示の仕方は、可能性のある産地を「又は」でつないで表示します。

例)牛肉(国産又はアメリカ産)

ちなみに表示順は過去の使用実績などをもとに、使用の多い順から表示されます。
また3ヶ国以上になると、3カ国目以降は「その他」と表示することもできます。

例)牛肉(国産又はアメリカ産又はその他)

ただし、実際の商品が表示されている産地のどれかを特定することはできません。

2,大くくり表示

大くくり表示は、原料の調達先が3ヶ国以上の場合に「又は」でつなぐのではなく、「輸入」
と一括表示することです。

例)牛肉(輸入)

大くくり表示は国産か外国産かを判断することはできますが、先ほどの可能性表示とちがい、どこの国かを特定することはできません。

また、可能性表示と大くくり表示を組み合わせて表示することもできます。

例)牛肉(国産又は輸入)、豚肉(輸入又は国産)

表示順は過去の使用実績の多い産地が優先されますが、先に表示されている産地が実際の商品の産地とは限りません。

3,製造地表示

製造地表示は、原料がすでに加工された食品の場合に、原料の産地の代わりに製造地を表示します。

例えば、アメリカ産の小麦を日本で小麦粉に製粉し、その小麦粉を使ってパンを製造した場合は「小麦粉(日本製造)」と表示できるのです。

ただ、この表示は原料自体も国産だと誤解を招く可能性があります。

以上3つが新しい加工食品の産地表示の方法として考えられているのですが、どれも明確な産地を判断することはできません。

国産かもしれないし、もしかしたら外国産かもしれない、また外国産の場合だとしてもどこの国か分からないという、あやふやなものです。

この表示方法では消費者を困惑させるだけだと反対する意見もあり、まだどういった形で施行されるかは未定です。

ただ、加工食品は外国産の食品が多く利用されています。
外国産の食品をあまり摂取したくない場合は、加工食品の利用を控えるか、国産の表示がある加工食品だけを利用するしか、今のところ手立てはありません。

そもそも食品の産地が気になる理由は、国産の食品より外国産の食品のほうが何となく危険なイメージがあるからですが、本当に外国産の食品は国産食品よりも危険なのでしょうか?

外国産の食品は、国産よりも危険?


結論からいうと、「国産よりも外国産の食品のほうが危険だ」と断言できるほど大きな危険性はありません。
ただ、国産食品よりも注意が必要な点はあります。

なぜなら、輸入食品はごく一部の食品しか安全性が確認されていないからです。

輸入食品は運搬時の温度変化や湿気などで傷みやすく、食品の状態を確認することは食の安全を守るための重要なポイントです。

しかし、2015年に輸入届が申請された約226万件に対して、安全性の検査が実施された輸入食品は195,667件だけ。

輸入食品全体のわずか8.7%しか、安全性が確認されていないのです。

また市場への流通の手続きと同時進行で、安全性がチェックされるモニタリング検査では、市場に流通した後に違反が発覚した食品もあります。

さらに違反が発覚した食品の中には、すでに私たちが食べてしまった食品もあるのです。

ちなみに大阪府立公衆衛生研究所でおこなわれた、2014~2015年の残留農薬の検査結果では、残留農薬が検出された割合は国産食品24%に対して、輸入食品は43%。

この検査結果がすべて輸入食品に当てはまる訳ではありませんが、輸入食品のほうが残留農薬の危険性が高いのです。

なお食品に残留した農薬を摂取し続けると、神経系やアレルギーに影響する恐れがあると考えられています。

また野菜や果物だけでなく、外国産のお肉にも注意が必要です。

日本では牛や豚などの家畜に対して、成長を促進させるホルモン剤の投与が禁止されていますが、アメリカやオーストラリアでは成長ホルモンの使用が認められています。

そのうえ、日本は国内での成長ホルモンの使用を禁止しているにも関わらず、輸入食品に対しては使用を禁止していないため、成長ホルモンが投与された家畜の肉が大量に輸入されているのです。

ちなみに牛肉の国産と外国産の割合は、国産42%に対して外国産58%。

日本は国内での成長ホルモンの使用を禁止しているにも関わらず、輸入食品に対しては使用を禁止していないため、成長ホルモンが投与された家畜の肉が大量に輸入されているのです。

この輸入された牛肉のうち、約9割がアメリカ産とオーストラリア産です。
もちろん、その中には成長ホルモン剤が投与された家畜の肉も含まれています。

成長ホルモン剤を投与された家畜の肉を摂取し続けると、乳がんや子宮がん、前立腺がんの発症に関わることが危険視されています。

このように、外国産の食品には国産の食品にはない危険性が潜んでいる場合もあるのです。

まとめ

消費者庁の調査では、加工食品を購入する際に原料の産地を参考にして購入を決める人が、約8割もいるとされています。

自分や家事が口にする食品が、どこで作られたかを知ることは食の安心・安全を守るための重要なポイントです。

産地が不明な食品よりも産地表示の食品を選び、安心できる食事を摂取していきましょう。

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