糖質制限ダイエットで隠れメタボに?まちがった糖質制限は体を悪くする?

糖質制限ダイエットで隠れメタボに?まちがった糖質制限は体を悪くする?

今やカロリーを抑える食事制限より主流となった、糖質制限ダイエット。
ご飯やパン、ジャガイモなどの糖質が多く含まれる食品を控えるだけで、体重がみるみる落ちると話題の食事法です。

しかし周りのみんながやっているからと、軽い気持ちで糖質制限をおこなうのは危険です。

正しい知識をもたずに糖質制限をおこなうと、めまいや冷や汗などの体調不良、さらには動脈硬化、隠れメタボなどを引き起こす場合があります。

そこで、糖質制限について調べてみました。
動糖質制限の正しい方法や注意点について、一緒に確認していきましょう。

そもそも糖質制限って、何をどのくらい制限するの?

そもそも糖質制限って、何をどのくらい制限するの?

まちがった糖質制限によって、動脈硬化や隠れメタボを引き起こさないために、まずは糖質制限の正しい方法や注意点を知っておきましょう。

そもそも、糖質とは3大栄養素の1つ。
脂質・タンパク質と並んで、私たちの体に欠かせない重要な栄養素です。

糖質が多く含まれる食品は、お米やパン、麺類(うどん・パスタ他)、イモ類(ジャガイモ・サツマイモ他)、カボチャ、トウモロコシ、栗など。

これらの糖質を多く含む食品の摂取を控える食事法が『糖質制限』です。

ちなみに糖質制限の定義は今のところなく、制限する糖質の量に決まりはありません。
朝昼晩の食事のうち1食だけ糖質の摂取を制限する人もいれば、一切糖質を摂取しない人など、制限する量は個人によってバラバラです。

ただ糖質の制限量はちがっても、目的はどれも同じ。
糖質の摂取を控えると、2つの効果が期待できるとされています。

それは、「血糖値の上昇を防ぐこと」と「脂肪をエネルギー消費させる」ことです。

1つずつ順番に見ていきましょう。

血糖値の上昇を抑えて、肥満を予防する

血糖値の上昇を抑えて、肥満を予防する

糖質制限の最大の効果は、血糖値の上昇が抑えられることです。

血糖値とは、血中に含まれるブドウ糖の値。
ブドウ糖は糖質の中に含まれているため、糖質が多く含まれる食品ほど血糖値を上昇させます。

じつはこの血糖値の上昇が、肥満の原因に深く関わっているのです。

下記は、血糖値の上昇によって肥満リスクが高まるメカニズムです。

糖質(お米・パンなど)を摂取

血糖値が急激に上がる

血糖値を下げるため、インスリンが大量に分泌される

インスリンの別名は「肥満ホルモン」
脂肪の合成を促す作用と、脂肪の分解を抑制する作用がある

その結果
血糖値が急上昇して、インスリンが大量に分泌されるほど
体に脂肪がたまって肥満になる

★インスリンの大量分泌を避けるには…
血糖値を急上昇させない
お米やパンなど、糖質の多い食品を控える『糖質制限』が有効

ちなみに血糖値は、一定範囲の値でないと体に悪影響を及ぼす危険性があります。

そのため血糖値が上昇すると、体は血糖値を下げるインスリンを分泌して血糖値を一定値に戻そうと働きかけます。

しかし、このインスリンが肥満リスクを高める原因。

インスリンは血糖値を下げる作用以外に、脂肪の合成を促進させて体内に脂肪を蓄積させたり、脂肪の分解を抑制して脂肪の代謝を阻害する作用があります。

その結果、インスリンが大量に分泌されるほど、体に脂肪がたまりやすく肥満の原因となるのです。

ただ逆を言うと、インスリンの分泌量を抑えられれば肥満を防止できるということ。

そこで注目されたのが、お米やパンなど糖質の多い食品を控える糖質制限です。

そこで注目されたのが、お米やパンなど糖質の多い食品を控える糖質制限です。

糖質の多い食品を控えれば、血糖値は急上昇せずインスリンも大量分泌されません。

インスリンの分泌量が抑えられれば、体内で脂肪が合成されたり、脂肪の分解が抑制されないので、肥満につながりません。

糖質の摂取量をコントロールすることで、肥満リスクを防止するのです。

続いて2つ目の効果を見ていきましょう。

糖質を控えると、脂肪がエネルギーに変わる

糖質制限の2つ目の効果は、脂肪がエネルギー消費されやすくなること。

糖質制限の2つ目の効果は、脂肪がエネルギー消費されやすくなること。

そもそも3大栄養素のうち、糖質と脂質は私たちの体を動かすエネルギー源です。

ただ、エネルギー消費されるのは同時ではありません。
糖質が先に消費され、脂質がエネルギーとして消費されるのは体内の糖質が消費されたあと。

脂質はなかなかエネルギーとして消費されないため、脂肪となって体に蓄積されやすいのです。

ところが糖質制限すると、優先的にエネルギー消費される糖質がないため、脂質がすぐにエネルギーとして消費されます。

さらに、脂質は血糖値を急上昇させません。
そのため体に脂肪をためるインスリンの分泌量は、糖質を摂取した時より抑えられます。

インスリンの量が抑えられるので、糖質摂取時よりも体に脂肪がたまりにくくなるのです。

-糖質
(米・パン)
脂質
(肉・乳製品)
血糖値への影響
急上昇ゆるやか
インスリン分泌量
多い少ない
エネルギー消費
即時糖質のあと

★糖質制限すると、脂質がすぐにエネルギーに変わる

以上のことから、糖質制限をすると肥満のリスクを高めるインスリンの分泌を抑制し、脂肪のエネルギー消費を促進させるとして、ダイエット効果が期待されています。

ただし、糖質制限は方法をまちがえると、体に悪影響を及ぼす場合があるのです。

糖質制限ダイエットの危険性

糖質制限ダイエットの危険性

厚生労働省が推奨する理想の食事バランスは、糖質60%・脂質25%・タンパク質15%。
じつは、私たちが摂取すべき栄養素の半分以上を糖質が占めています。

糖質制限は、本来なら栄養摂取の軸となる糖質を抑えるため、制限した分をほかの栄養素で補う必要があります。
この補給方法をまちがえると、体に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。

陥りやすい糖質制限での注意点は2つ。
それは、カロリー不足とほかの栄養素の過剰摂取です。

順番に詳しく見ていきましょう。

糖質制限中のカロリー不足は、隠れメタボを引き起こす?

糖質制限中のカロリー不足は、隠れメタボを引き起こす?

まず糖質制限で陥りやすいのが、カロリー不足です。
糖質制限を始めると、たった1週間で2kg、1ヶ月で10kg体重が落ちる人がいます。

体重がどんどん落ちていくと、体重を減らすことに夢中になって十分な食事を摂らなくなり、カロリー不足になる危険性があります。

糖質の代わりに、脂質やタンパク質を十分摂取しなければいけません。

脂質の摂取量が足りないと体力が低下して、めまいやフラつきなどの体調不良が起こります。

また、タンパク質は筋肉や内蔵、皮膚、骨、髪など、体のあらゆる組織に欠かせない栄養素。
免疫細胞もタンパク質からつくられているため、不足すると免疫力が低下して風邪などを引きやすくなります。

さらにカロリー不足となった体内は、筋肉を燃焼させてエネルギーを作り出します。
筋肉が減少すると、代謝能力が低下していくのです。

その結果、糖質や脂質を十分に代謝できず、体内に脂肪がたまっていく恐れがあると考えられています。

このような糖質制限では、体重が減ってダイエットが成功したように思えても、じつは減っているのは脂肪ではなく筋肉だけ。
筋肉量が低下して体脂肪の割合が多い、隠れメタボになっているかもしれません。

なお、適正体重の目安とされるBMI【体重(kg)÷身長(m)の2乗】が25未満なのに、高血圧や脂質異常、高血糖の症状がある人は、隠れメタボの危険性があります。

正常値の目安

正常値の目安
【血圧】80~130mmHg

【中性脂肪】150mg/dl以上
【悪玉(LDL)コレステロール】140mg/dl未満
【善玉(HDL)コレステロール】40mg/dl以上

【血糖値(空腹時)】100 mg/dl未満
【血糖値(食後)】140 mg/dl未満
【ヘモグロビンA1c】6.2%未満

隠れメタボは通常のメタボと同じく、動脈硬化の発症リスクが高いため、放置していると心筋梗塞や脳出血などの病気を引き起こす危険性があります。

2016年にメタボと診断された人は970万人以上だと言われていますが、隠れメタボの人も910万人以上いると考えられています。

体重の数字だけで、ダイエットの効果を判断してはいけません。

またカロリー不足とは反対に、糖質以外の栄養素の過剰摂取にも注意が必要です。

肉ばかり食べる糖質制限は、動脈硬化のリスクを高める

肉ばかり食べる糖質制限は、動脈硬化のリスクを高める
糖質制限ではお米やパン、麺類、イモ類などの摂取が制限されます。

そのため脂質やタンパク質が豊富に含まれる肉や魚、大豆製品、乳製品などの摂取量が大幅に増えることになるのですが、脂質とタンパク質の過剰摂取にも注意が必要です。

まず脂質が多く含まれる肉には、飽和脂肪酸という油の成分が豊富に含まれています。

飽和脂肪酸は過剰摂取すると、血中に悪玉コレステロールや中性脂肪を増やして、動脈硬化の発症リスクを高める危険性があります。

実際に、朝昼晩すべての食事でお米やパンを一切食べず、夜は毎日お肉を食べるという糖質制限をおこなった人では、脳内に動脈硬化が発生。

脳梗塞の前触れである、一過性脳虚血発作を発症したという事例もあります。

また、タンパク質の過剰摂取にも注意が必要です。

余分なタンパク質は尿となって排出されるのですが、過剰摂取によって排出量が多くなれば、尿を作りだす腎臓に負担がかかり、腎臓障害を引き起こす恐れもあります。

さらに厚生労働省では、タンパク質のエネルギー比率が20%以上になると、糖尿病や心血管疾患(心筋梗塞・狭心症)、がん、骨量の減少などの発症リスクを高める恐れがあるとも考えられています。

他にも、アメリカ国立衛生研究所(NIH)では、炭水化物を制限する食事は死亡リスクを1.12倍高めると発表。
イギリスの医学雑誌でも長期的に炭水化物の摂取を制限すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが1.6倍上がると、糖質制限による体への影響を危険視しています。

極端な糖質制限は、健康を害する危険性もあるのです。
では、体に安全な正しい糖質制限の方法を見ていきましょう。

安全な糖質制限の方法とは

安全な糖質制限の方法とは

体に安全な糖質制限をおこなうには、まずカロリー不足になってはいけません。
そして、脂質・タンパク質の過剰摂取に注意することです。

体に必要な栄養素も必要以上に摂取すれば、体に悪影響を及ぼす場合があります。
そのためどれか1つに偏るのではなく、バランスよく摂取することが大切です。

そのため制限する糖質の量は、いつも摂取していた量の半分を目安にしましょう。
(※糖尿病など血糖値に問題がある人は、糖質の制限量は医師の指示どおりにして下さい)

また朝昼晩のいずれか1食の糖質量を制限するよりも、3食とも平均的に制限するほうが血糖値の変動を抑えることができます。

徹底した厳しい糖質制限ではなく、通常の食事よりも少し糖質の摂取量を抑える、ゆるい糖質制限が理想です。

さらに脂質やタンパク質を補う食品は、肉よりも魚がおすすめ。

その理由は、じつは最も体に安全な食事は糖質制限ではなく、パスタや魚、野菜を中心に食べる地中海食だからです。

地中海食が体に良いと結論づけたのは、食事療法の安全性を比較するDIRECT試験。

DIRECT試験では、糖質を制限する糖質制限食(●)・脂質を制限する脂質制限食(▲)・パスタを中心に魚や野菜、ナッツ、オリーブオイルをよく摂取する地中海食(■)のそれぞれの食事によるダイエット効果が検証されました。

その結果、ダイエット期間中の1年間で最も効果があったのは糖質制限食。
しかしダイエット終了後の体重を比較すると、最もリバウンドしにくかったのは地中海食だったのです。

その結果、ダイエット期間中の1年間で最も効果があったのは糖質制限食。 しかしダイエット終了後の体重を比較すると、最もリバウンドしにくかったのは地中海食だったのです。

またダイエット後の中性脂肪の値も、糖質制限よりも地中海食のほうが増加しませんでした。

またダイエット後の中性脂肪の値も、糖質制限よりも地中海食のほうが増加しませんでした。

なお、地中海に住む人はアメリカや欧米に比べると、心筋梗塞などの心臓疾患の発症率が低いことも分かっています。

食事内容が制限される糖質制限では、お米やパンなどを食べたくても我慢しなければならず、多少ストレスを感じることも。

一方、オリーブオイルを使用しながら魚や野菜、ナッツの積極的な摂取を心掛ける地中海食は、制限がないため無理なく続けられるとも考えられています。

長期的な体への影響を考えると、糖質を一切口にしない厳しい糖質制限ではなく、地中海食を意識しながら糖質の摂取量を少し控えるくらいがおすすめです。

グルテンフリーと糖質制限は同じじゃない

グルテンフリーと糖質制限は同じじゃない

ところで、パスタやパンなどの小麦製品の中には、「グルテンフリー」と表示された商品がありますが、グルテンフリーと糖質制限はまったく意味がちがいます。

そもそもグルテンとは、小麦粉に含まれるタンパク質の一種。
糖質とはまったくの別物です。

グルテンを消化する酵素を持たない人が、グルテンを含んだ通常のパンやパスタなどを摂取すると消化不良を起こし、体にダルさを感じたりアレルギーを引き起こしたりする場合があります。
(※詳しくはパンの記事をご覧ください)

そのためグルテンフリー食品は、小麦製品を食べると体調不良を起こす人に向けての商品であって、ダイエット食品ではありません。

では最後に、痩せすぎの危険性について見ていきましょう。

痩せすぎは肥満よりも死亡リスクが高い

痩せすぎは肥満よりも死亡リスクが高い

見た目を意識しすぎて、必要のない糖質制限やダイエットをおこなうのはおすすめできません。

ちなみに2015年の厚生労働省による「国民健康・栄養調査結果」では、20代女性の5人に1人が痩せすぎ状態にあります。

肥満ばかりが体に悪いと思われがちですが、じつは痩せすぎのほうが死亡リスクは高いのです。

肥満ばかりが体に悪いと思われがちですが、じつは痩せすぎのほうが死亡リスクは高いのです。

特に女性はダイエット願望が強い傾向にありますが、必要のないダイエットは止めましょう。

女性は痩せすぎると不妊になりやすく、妊娠しても胎児がお腹の中で十分に成長できないなどの悪影響が及ぶ場合があります。

なお、出生体重が2,500g未満の低出生体重児は、将来メタボを発症するリスクが高まることが確認されています。

低出生体重児は、妊娠前の母体が痩せすぎであったり、妊娠中の体重増加が7kg未満だと出産するリスクが高まるので、母親の痩せすぎには注意が必要です。

将来の子どもの健康のためにも、体重の数字ばかりを気にしすぎないようにしましょう。

まとめ

糖質制限を含む食事制限やダイエットの本来の目的は、健康な体を手に入れることです。

そのため数字ばかりにとらわれず、色んな食材を摂取して栄養バランスを整えることが大切です。

何かを食べたり制限するだけでは、健康な体は維持できません。
栄養バランスのよい食事を心掛けていきましょう。

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