大人の食物アレルギーは突然発症する!昨日まで食べていた食品で起こる理由とは
幼少期に卵や牛乳などの食物アレルギーを発症していない限り、食物アレルギーを気にする人はほとんどいないはず。
しかし、昨日まで普通に食べていた食品が原因で、食物アレルギーを発症することがあるって知っていますか?
特に大人になってから発症する食物アレルギーは、呼吸困難や意識障害などで命を危険にさらす「アナフィラキシー」を引き起こす危険性が高いと考えられています。
ですから、食物アレルギーは大人も注意が必要。
そこで、大人の食物アレルギーについて調べてみました。
またアレルギーの発症数が急増している理由についても、一緒に確認していきましょう。
アレルギーは免疫機能の誤作動
そもそもアレルギーとは、私たちの体をウイルスや菌から守る免疫機能が、過剰反応することで起こる病気のこと。
本来なら体に無害な食べ物や花粉などを免疫細胞が異物だと勘違いして、免疫機能が過敏に反応します。
その結果、じんましんや湿疹、吐き気、下痢など、体にさまざまな悪影響が引き起こされるのです。
なお、アレルギーの原因となる物質は、食品や花粉、ホコリ、ダニ、動物の毛、金属、薬物などがあり、物質や症状のちがいによってさまざまな種類に分類されます。
主なアレルギーの種類は、下記のとおりです。
アレルギーの主な種類 | 原因物質 | 主な症状 |
---|---|---|
食物アレルギー | 卵や牛乳、小麦など | じんましん 湿疹、嘔吐 |
花粉症 | スギやヒノキなど 植物の花粉 | くしゃみ、鼻水 目のかゆみ |
ハウスダスト アレルギー | ホコリやダニ | くしゃみ、湿疹 目のかゆみ |
動物アレルギ | ペットなど 動物の毛やフケ | くしゃみ、湿疹 むくみ |
アトピー性 皮膚炎 | ホコリやダニ ストレス・環境など | 耳や目、首元を中心に かゆみのある湿疹 |
気管支ぜんそく | ホコリやダニ ストレス・環境など | 気道が狭くなり 呼吸が困難になる |
この他にもアレルギーの原因物質は無数にあるとされていて、どの物質でどんな症状が起こるかは人によってちがいます。
日本人の2人に1人がアレルギー疾患を抱えている!
ちなみに厚生労働省の「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」によると、ぜんそくや食物アレルギーなどのアレルギー疾患を抱える人の割合は、増加傾向にあるといいます。
2005年の同委員会の調査では、日本人の3人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱えていることが確認されました。
しかし2011年の調査では、ぜんそくの患者数は400万人から800万人と2倍に急増。
その結果、今や日本人の2人に1人が花粉症やぜんそく、食物アレルギーなど、何らかのアレルギー疾患を抱えていると考えられているのです。
とはいえ、アレルギー疾患は先天的な発症が多いため、幼少時にアレルギーの症状が何もなければ、アレルギーに注意する人はほとんどいないはず。
ところが昨日まで普通に食べていた食品が原因で、突然食物アレルギーを発症する場合があるのです。
私たちは、いつアレルギーを発症するか分からない
去年までは平気だったのに、今年から急に花粉症になったという経験はありませんか?
ある日突然、花粉症を発症するのと同じく、食物アレルギーも年代に関係なく、いつでも発症する恐れがあります。
その理由は、アレルギーを起こす原因(アレルゲン)に対抗する物質「IgE抗体」が、体内でどんどん蓄積されるから。
そもそもアレルギーの直接的な原因は、花粉や食品、ハウスダストなどですが、アレルギーの発症にはストレスや環境汚染なども大きく影響しています。
これらの要因が重なり合うことで、アレルギーのリスクが高まると考えられているのです。
このアレルギーを起こす要因とリスクの関係については、水とコップでよく例えられます。
水がアレルギーの要因となる花粉や食品、ハウスダスト、ストレス、環境汚染などで、コップが私たちの体です。
コップの中には、花粉や食品、ハウスダストのアレルゲン、ストレス、偏った食生活などで、どんどん水が溜まっていきます。
やがてコップの中は水でいっぱいになり、それ以上になると溢れます。
その溢れた状態が、食物アレルギーや花粉症などのアレルギーが起こったことを現しているのです。
また、コップの大きさは人によって違い、もともとアレルギー体質の人はすでにコップに水が入っているため、水が溢れやすくアレルギー症状が起こりやすいとされています。
なお、私たちの中にはコップの水が一生溢れない人もいれば、明日溢れる人もいます。
コップの水はいつ溢れるか分からないのです。
そこで注意が必要なのが、食物アレルギーです。
食品は直接体内に入るだけでなく、花粉などと比べて一度に摂取する量が多くなります。
そのため、アレルギー症状が重症化する恐れがあるのです。
大人と子どもでは、アレルギーを起こす食品がちがう
食物アレルギーを起こす主な食品は、卵や牛乳、小麦、ソバ、ナッツ類、甲殻類など。
ちなみに食物アレルギーは0~1歳の乳幼児が最も多く、原因となる食品は卵や牛乳が大半を占めています。
しかし20歳以上になると卵や牛乳ではなく、小麦や魚類・甲殻類、果物などが原因で発症するケースがほとんど。
食物アレルギーの原因食品は、年齢によって変化していくのです。
食物アレルギーの原因となる主な食品
そのためどんな食品を摂取する場合も、違和感を見逃さないこと。
また食物アレルギーは加熱した食品よりも、生で摂取する場合にアレルギー症状が強く現れやすいので、魚類や甲殻類、果物などを生で摂取する際は、特に注意が必要。
焼き魚やゆでたカニで現れなくても、刺し身で食べた場合に症状が現れる場合があります。
ちなみに子どもの頃の食物アレルギーは、成長とともに改善される傾向があります。
これはアレルギー反応を起こしていた食品に対する免疫機能が、成長とともに整うため。
しかし大人になってから発症した食物アレルギーは、治ることはありません。
ですから、一度アレルギー反応を起こした食品は、摂取を避けるしかないのです。
食材そのものは避けやすいですが、さまざまな食品が原料に含まれている加工食品は、知らずに摂取する危険性もあるので注意が必要です。
なお卵や牛乳、小麦などのアレルギーを起こしやすい食品は、原料表示とは別にアレルギー表示が義務づけられているので、原料に使用されているか簡単に見分けることができます。
問題はアレルギーの表示義務がない、キウイやクルミ、サバなどを含む20品目です。
製品によってはアレルギーの表示義務がある7品目と同じように、上記の20品目も表示されている場合がありますが、表示のない製品もたくさんあります。
20歳以上になると、リンゴやバナナなど表示義務のない食品で発症するケースが多くなるので、アレルギー表示だけでなく原料表示もしっかりチェックしなければいけません。
また湿疹やじんましんなど、アレルギーだと判断しやすい症状がない場合でも、食後に下記のような症状を感じる場合は、食物アレルギーの疑いがあります。
食物アレルギーの疑いがある症状
- 唇や口の周りがかゆい
- 喉がかゆかったり、イガイガする
- しびれや痛みはないが、何となく口の中に違和感がある
- 軽度の目のかゆみ
- 軽度の肌の赤み
これらの症状を気にせず摂取を繰り返していると、呼吸困難や意識障害を引き起こすアナフィラキシーを引き起こす危険性があります。
アレルギー症状はじんましんや湿疹といった皮膚への影響だけでなく、粘膜や消化器、呼吸器、神経など、全身にさまざまな影響を与えます。
アナフィラキシーとは、その症状が全身に現れる状態のこと。
軽度の肌のかゆみや赤みとは、明らかにちがう症状が現れます。
アナフィラキシーの主な症状
- 意識がもうろうとして、ぐったりしている
- 唇や爪が青白い
- 脈が乱れている
- 息がしにくい、呼吸がゼーゼーしている
- 激しい嘔吐を繰り返す
アナフィラキシーによって血圧が低下したり意識障害などのショック状態に陥ると、命を落とす場合があるので、このような症状が確認された場合はすぐ救急車を呼びましょう。
食物アレルギーは重症化すると、命に関わる危険性があります。
なお、食物アレルギーを起こさないためには、同じ食品ばかりを食べ続けない、腸内環境を整えるなど、いくつか方法があります。
その理由を確認する前に、なぜアレルギーが起こるのか、そのメカニズムを確認しましょう。
食物アレルギーを防ぐには
はじめにもお伝えしましたが、アレルギー疾患は免疫機能のバランスが崩れることで起こります。
免疫細胞にはさまざまな種類がありますが、その中でもアレルギーに関係している細胞が「Th2細胞」と「B細胞」。
Th2細胞はアレルギーの原因(アレルゲン)が体内に入ったことを確認すると、B細胞にアレルゲンに対抗する物質(IgE抗体)を作るように指示を出します。
下記が、そのメカニズムです。
【Th2細胞・B細胞のはたらき】
アレルギーの原因(アレルゲン・抗原)となる
ダニや花粉、食品などが体内に入る
↓
アレルゲンの侵入をTh2細胞が確認
↓
Th2細胞はB細胞に
アレルゲンに対抗する物質「IgE抗体」を作るように指示
↓
B細胞はアレルゲン(花粉や卵など)に合わせた
IgE抗体を作りだす
アレルギーの原因(アレルゲン・抗原)となる
ダニや花粉、食品などが体内に入る
↓
アレルゲンの侵入をTh2細胞が確認
↓
Th2細胞はB細胞に
アレルゲンに対抗する物質「IgE抗体」を作るように指示
↓
B細胞はアレルゲン(花粉や卵など)に合わせた
IgE抗体を作りだす
その後、B細胞によって作り出されたIgE抗体は、マスト細胞(肥満細胞)に結びついて、アレルゲンを待ち伏せします。
やがて侵入してきたアレルゲンがIgE抗体やマスト細胞にくっつくと、マスト細胞は中から炎症物質を放出します。
放出された炎症物質により、かゆみやくしゃみ、湿疹、じんましんなど、体にさまざまな症状が発生。
これがアレルギーが引き起こされる流れです。
このように、アレルギーはIgE抗体にアレルゲンが接触した際に引き起こされるので、体内にIgE抗体が増えるほどアレルギーを発症しやすくなります。
なおIgE抗体は、Th2細胞の指示を受けてB細胞が作り出します。
ですからアレルギーの根本的な原因は、IgE抗体を作る指示を出すTh2細胞なのです。
ちなみに免疫細胞の中には、Th2細胞と似た働きをするTh1細胞があります。
Th1細胞もTh2細胞と同じく、B細胞に敵に対抗する抗体を作る指示を出す細胞です。
ただ、Th2細胞とTh1細胞が反応する敵の種類はちがい、Th2細胞は花粉やダニ、食品などのアレルゲンに反応するのに対して、Th1細胞が反応するのはウイルスや細菌などの病原菌です。
反応する物質
【Th1細胞】ウイルスや細菌などの病原菌
【Th2細胞】花粉やダニ、食品などのアレルゲン
反応する物質がちがうため、Th1細胞とTh2細胞はどちらか1つが過剰に機能しないようにバランスを取ることで、免疫機能を正常に保っています。
そのため2つの細胞のバランスが整っていると、アレルギーは起こりません。
しかし、今の私たちはこの2つのバランスが崩れていると考えられています。
Th2細胞が過剰になっているため、花粉や食品などのアレルゲンに過敏に反応して、アレルギーを起こしやすくなっているのです。
免疫機能のバランスが悪くなっている理由
Th2細胞が過剰になっている大きな原因は、腸内環境の悪化。
私たちの体内にある免疫細胞の60~70%は腸に存在しています。
そのため腸内環境が悪いと、Th1細胞やTh2細胞などの免疫細胞が正常に機能できなくなるのです。
ちなみに腸内には、腸内環境を整える「善玉菌」と腸内環境を悪化させる「悪玉菌」、日によって善玉菌と悪玉菌のどちらかと同じ働きをする「日和菌」があります。
免疫細胞を正常に働かせるには、腸内環境を整える善玉菌を増やすことが重要。
しかし、私たちは悪玉菌を増やしやすい食生活を送っているのです。
それは肉の過剰摂取。
腸内環境を悪化させる悪玉菌は、動物性のタンパク質や脂肪をエサとして増殖します。
現代人は魚離れが進行する一方で、肉の摂取量は年々増加するばかり。
そのため、私たちの体内は悪玉菌が増えやすい状態となっています。
その結果、免疫細胞が正常に機能できずに免疫機能のバランスが崩れることにより、アレルギーが起こりやすくなっているのです。
過剰な除菌・殺菌は止めよう
また、近年急激に増えた除菌・殺菌グッズも、アレルギーの発症に影響を及ぼしていると考えられています。
アレルギーの発症には、ウイルスに反応するTh1細胞とアレルゲンに反応するTh2細胞のバランスが重要でした。
もともと私たちの体内はアレルゲンに反応するTh2細胞が多く、Th1細胞は生活の中で体内に侵入してくるウイルスや菌と戦うことで増えていきます。
しかし、近年はさまざまな除菌・殺菌グッズが急増。
手を洗った後や持ち物、衣服・室内などに、スプレーなどで菌やウイルスを除菌・殺菌する行為が多く見られるようになりました。
そのため、本来ウイルスや菌の侵入によって強くなるはずのTh1細胞が働く機会が減ったのです。
その結果、Th1細胞とTh2細胞のバランスが整わず、アレルギーを発症しやすくなっているのです。
以上のことから、アレルギーを起こさないようにするには、腸内環境を整えることと過剰な除菌・殺菌は控える必要があります。
腸内環境を整える方法
- 肉を過剰摂取しない
- 善玉菌を増やす発酵食品(ヨーグルトや漬物など)を摂取する
- 善玉菌のエサとなる食物繊維・オリゴ糖を摂取する
また同じ食品ばかりを食べ続けるのも止めましょう。
同じ食品に対する抗体がたくさん作られると、アレルギーを発症しやすくなります。
食物アレルギーを起こさないためには、色んな食品をバランス良く摂取することが大切です。
まとめ
食物アレルギーは年齢に関係なく、いつ発症するか分かりません。
また軽度だからと甘く見ていると、ある日命を危険にさらすアナフィラキシーを発症する場合があります。
何かを摂取して違和感があったら、食べるのは止めて体調の変化をしっかり確認しましょう。
また少しでも違和感のあった食品は、今後食べないように注意することが食物アレルギーを重症化させない大きなポイントです。