頭痛や疲労の原因はパン?グルテン不耐症や小麦粉の残留農薬による危険性とは

頭痛や疲労の原因はパン?グルテン不耐症や小麦粉の残留農薬による危険性とは

頭がボーっとする、疲れが取れないなど、しっかり休んだはずなのに体がスッキリしないと感じているあなた。
もしかすると、その不調の原因はパンやパスタに含まれる小麦かもしれません。

私たちが普段食べている食品には、小麦を使用したものがたくさんあります。
そのため現代人は小麦を食べ過ぎている傾向があり、その影響が体に不調を起こしているというのです。

また、小麦は洗浄せずに製粉されるため、残留農薬による影響も心配です。

そこでパンや小麦の危険性について調べてみました。
小麦の摂取によって体調不良がなぜ起こるのか、また小麦の残留農薬はどのくらい危険なのか確認していきましょう。

私たちは年間30kgの小麦を食べている

日本人の主食はお米と言われていますが、現代人はお米よりもパンをよく食べています。

例えば、朝食にパンとごはんのどちらを食べるかというアンケート調査では、ごはんよりもパンを食べる人のほうが多いことが確認されています。

例えば、朝食にパンとごはんのどちらを食べるかというアンケート調査では、ごはんよりもパンを食べる人のほうが多いことが確認されています。

上記の表を年代別に見ると、男性は50代以下まではごはん派が多いものの、60代以上の男性と、女性は全年代でパン派の方が多い結果に。

総合的に見てもごはん派39%・パン派44%と、日本人は朝食にお米よりもパンを食べる人の方が多い傾向にあるのです。

なお小麦粉を原料とする食品はパン以外にも、パスタやうどん・ラーメンなどの麺類、餃子やピザの生地、天ぷら、クッキー、ケーキなどたくさんあります。

さらにカレーやシチューのルー、カスタード、チョコクリーム、増量剤(小麦たん白)など、一見、小麦粉が含まれているか分からない食品にも小麦粉は使用されているのです。

そのため朝食にパンを食べていなくても、私たちはさまざまな食品から毎日のように小麦を摂取しています。
その消費量は1人あたり年間31~33kgと、私たちは大量の小麦を摂取しているのです。

ちなみに、小麦は胚乳・外皮(ふすま)・胚芽で構成されているのですが、製粉して小麦粉になるのは胚乳部分だけです。

小麦は胚乳・外皮(ふすま)・胚芽で構成されているのですが、製粉して小麦粉になるのは胚乳部分だけです。

一方、外皮や胚芽にはミネラルやビタミンが豊富に含まれているため、外皮だけを砕いたふすま粉や、胚乳・ふすま・胚芽のすべて含んだ全粒粉を使用した製品もあります。

ところが、私たちの中には小麦粉や全粒粉をうまく消化できない体質の人がいます。

自分がその体質と知らずに小麦製品を食べ続けていると、消化不良を起こすばかりか、便秘や下痢、慢性的な疲労感、集中力の低下など、体にあらゆる不調が引き起こされるのです。

小麦粉に含まれるグルテンって何?

小麦粉に含まれるグルテンって何?

小麦の摂取によって体に悪影響が生じる原因は、小麦に含まれるグルテンが関係しています。

グルテンとはタンパク質の一種。
弾力や柔軟な性質があり、パンの食感や麺のコシなどに関わる重要な成分です。
(※小麦の外皮(ふすま)にグルテンは含まれていません)

ところが、グルテンを摂取すると体調不良を起こす体質があるのです。

グルテンによる体調不良の原因は3つあります。
それはグルテン不耐症(過敏症)、リーキーガット症候群、セリアック病です。

それぞれの症状について細かく見ていきましょう。

グルテン不耐症(過敏症)

グルテン不耐症は、グルテンを消化する酵素を持たないことで引き起こされる症状。

よく牛乳を飲むと下痢を起こす人がいますが、これは乳糖不耐症といって牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素がないためです。

グルテン不耐症(過敏症)

小麦不耐症も乳糖不耐症と同じことで、小麦に含まれるグルテンを消化する酵素がないために引き起こされます。

なお乳糖不耐症の症状は下痢や嘔吐などですが、グルテン不耐症はその他にも慢性的な疲れや頭痛など、体にさまざまな悪影響を及ぼします。

まずグルテン不耐症の人が小麦製品を摂取すると、グルテンを消化できないため消化不良となり下痢や吐き気が引き起こされます。
さらに胃腸に残ったグルテンを消化・排出するため、胃腸は常に動き続ける状態に。

その結果、小麦以外の食品よりも消費時間は長くなり、睡眠中も胃腸が活動状態になる場合もあります。
胃腸が常に活動状態にあるため体は休まらず、疲れが溜まりやすくなるのです。

胃腸が常に活動状態にあるため体は休まらず、疲れが溜まりやすくなるのです。

なおグルテン不耐症の医学的なデータはまだ十分ではなく、発症の原因は酵素が無いこと以外に腸の過剰反応も考えられています。

これは小麦アレルギーではないにも関わらず、グルテンを摂取すると腸の免疫機能が過剰反応して体内に炎症を発生させるというもの。
グルテンを異物として判断してしまい、免疫機能が過剰反応を起こして正常に働かなくなるのです。

その結果、下痢や便秘、慢性的な疲労以外にもアレルギーや肌荒れ、頭痛、めまい、生理不順、不妊などを引き起こすと考えられています。

続いて、リーキーガット症候群について見ていきましょう。

リーキーガット症候群(LGS・腸管壁浸漏症候群)

リーキーガット症候群も、消化不良によって引き起こされる症状です。

ただグルテン不耐症とちがう点は、原因物質がグルテンだけでは無いこと。
グルテンの他に糖質やアルコールなども、リーキーガット症候群の原因となります。

また、グルテンやアルコールの過剰摂取と同時に、咀嚼回数もリーキーガット症候群のリスクを高める要因です。

テレビやケータイを見ながらの食事や、早食いなどは咀嚼回数が少なくなり、消化に必要な胃酸が分泌されにくくなります。

テレビやケータイを見ながらの食事や、早食いなどは咀嚼回数が少なくなり、消化に必要な胃酸が分泌されにくくなります。

その結果、食べ物は消化しきれずに腸壁に付着し、腸の粘膜を傷つけて腸管のバリア機能を低下させます。
するとバリア機能が低下した部分から、血中に菌やウイルスなどの毒素が侵入してしまうのです。

なお血液は全身を巡るため、血中に侵入した毒素は体にさまざまな悪影響を与えます。
下痢や便秘、頭痛、喘息、アレルギー、肌荒れ、関節炎、慢性疲労、免疫力・集中力の低下など、あらゆる不調を引き起こすのです。

特に現代人はテレビやケータイを見ながらの「ながら食い」や、柔らかい食べ物を好む傾向が強く、多くの人が十分な咀嚼をせずに食べ物を摂取していると考えられます。

そのためリーキーガット症候群の恐れがある日本人は、7割に及ぶとも考えられています。

ちなみにリーキーガット症候群やグルテン不耐症は、アレルギーとちがい小麦を摂取してもすぐに症状は出ません。

消化不良によって胃腸がダメージを受け、その後全身に影響が及ぶため症状が現れるのは数日後、少量では発症しない場合もあります。

そのため体調不良の原因が小麦だとは思わず、リーキーガット症候群やグルテン不耐症を発症していても気づかない場合がほとんどです。

「十分な睡眠を取っているのに疲れが取れない」、「頭がボーッとして集中できない」、他にも慢性的な便秘や下痢、頭痛がある人は、もしかすると小麦が原因かもしれません。

「十分な睡眠を取っているのに疲れが取れない」、「頭がボーッとして集中できない」、他にも慢性的な便秘や下痢、頭痛がある人は、もしかすると小麦が原因かもしれません。

続いて、セリアック病の症状を見ていきましょう。

セリアック病

グルテン不耐症やリーキーガット症候群は消化不良をきっかけに引き起こされますが、セリアック病は自己免疫疾患の1つ。
グルテンを摂取すると小腸の粘膜に炎症が起こり、栄養を十分に吸収できなくなる病気です。

グルテンを摂取すると小腸の粘膜に炎症が起こり、栄養を十分に吸収できなくなる病気です。

栄養の吸収が阻害されるので下痢や便秘だけでなく、貧血や体重の減少、骨・関節の傷み、疲労、成長障害、精神の乱れなどが引き起こされ、重症になると命に関わることもあります。

なお、セリアック病の発症率はアメリカやイギリスで約1%、日本では約0.7%と低いですが、手術や出産の後などに発症する場合もあります。

ただしセリアック病は少量のグルテン摂取でも体に影響が出るので、現段階で小麦製品を食べていても健全に生活が送れているなら、セリアック病の心配はないでしょう。

セリアック病よりも私たちが発症するリスクが高いのは、グルテン不耐症とリーキーガット症候群の2つです。

なお、自分がグルテン不耐症やリーキーガット症候群であるかは、グルテンの摂取を控えることで確認できます。

グルテンの含まれる小麦製品を最低でも2週間、できれば3週間食べずに生活してください。
その後グルテンの含まれる小麦製品を摂取して、摂取しなかった期間との体の様子を比較してみましょう。

グルテンを摂取しなかった期間は下痢や頭痛、疲れなどを感じなかったのに、グルテンの摂取を再開してから症状が現れた場合は、グルテン不耐症やリーキーガット症候群の恐れがあります。

小麦製品の摂取を控え、グルテンを含まないグルテンフリーのパンやパスタを選ぶようにしましょう。

また、今は症状がなくても今後発症する恐れは誰にでもあるので、小麦製品を取り過ぎないように注意しましょう。

小麦粉は農薬が高濃度で残っている

他にも、小麦を摂取するうえで心配な点があります。
それは小麦の残留農薬です。

小麦粉は農薬が高濃度で残っている

日本は食糧自給率が4割と低く、多くの食品を海外から輸入しています。
小麦においては、日本に流通する約9割が外国産。

日本は食糧自給率が4割と低く、多くの食品を海外から輸入しています。 小麦においては、日本に流通する約9割が外国産。

そのため私たちが食べている小麦は、ほぼ外国産なのですが、そこで気になるのが小麦の残留農薬です。

小麦に限らず海外から輸入する食品は、輸送時間が長かったり輸送中の温度変化などによって、カビや虫が付いたり腐敗する恐れがあります。

そのため食品の劣化防止の目的として、輸入食品は収穫後に農薬を使用するポストハーベストが認められています。

農薬は栽培中にも使用されていますが、栽培期間中に農産物に付着した農薬は日光や雨風によって分解され、減少していきます。
しかし、ポストハーベストは収穫後に使用される農薬のため、高濃度で食品に残ってしまうのです。

なお食品に残留する農薬の量は、毎日食べても体に影響しない基準値(ADI)が定められています。
そのため、小麦の残留農薬を心配する必要はないのかもしれません。

ただ、気になるのが残留農薬の基準値。
小麦の残留農薬の基準値は、お米の基準値の100倍の量が認められている農薬があるのです。

農林水産省による2016年度の小麦の残留農薬調査では、10種類以上の農薬が確認されています。

その中で残留農薬の基準値が高いのは、遺伝子組み換え作物への使用が多い除草剤のグリホサートと有機リン系農薬のマラチオンです。

その中で残留農薬の基準値が高いのは、遺伝子組み換え作物への使用が多い除草剤のグリホサートと有機リン系農薬のマラチオンです。 ちなみに、お米の残留農薬の基準値はグリホサートとマラチオンのどちらも0.1ppmまで。

ちなみに、お米の残留農薬の基準値はグリホサートとマラチオンのどちらも0.1ppmまで。

一方、小麦の残留農薬の基準値はグリホサートでお米の50倍の5ppm、マラチオンはお米の100倍の10ppmと、どちらも桁違いの量が認められているのです。

もちろん小麦に残留する農薬の量は、基準値ギリギリではありません。
しかしお米に比べると、農薬が高濃度に残留した小麦が流通していると考えられます。

また野菜や果物にも農薬は残留していますが、野菜や果物は必ず洗ってから食べます。
ところが小麦は一度も洗浄されないまま、小麦粉に製粉されているのです。

小麦粉は農薬がついたまま製粉されている

小麦粉は農薬がついたまま製粉されている

食品の品質を保つため、最低限の農薬使用は必要なこと。
また食品に残留した農薬は水洗いや茹でたりすることで、ある程度落とすことも可能です。

しかし、小麦粉を洗うことはできません。
そうなると製粉前に洗浄するしかありませんが、小麦は洗浄工程なしに製粉されるのです。

小麦粉の製粉工程は、まず海外から輸入された小麦には小石や麦わらなど混入しているので、その不純物と小麦が選別されます。
そして小麦に汚れが付着していれば、空気を当てて取り除きます。

その後、小麦に水が加えられるのですが、これは洗浄のためではありません。
水分を加えて外皮を柔らかくすることで、小麦粉のもととなる胚乳を取り出しやすくするのです。

水分を吸収した小麦はそのまま洗われることなく、機械で製粉されて小麦粉となります。

このように小麦粉は空気によって汚れは落とされるものの、水で洗浄されることなく製品化されます。
そのため小麦に残留した農薬は、そのまま小麦粉に混ざっている恐れがあるのです。

特に、小麦の残留農薬で確認されているマラチオンは有機リン系農薬の1つ。
有機リン系農薬は人への有害性は低いとされる一方で、神経系疾患への影響が危険視されています。

というのも有機リン系農薬が広く使用されるのと同じく、パーキンソン病などの神経系疾患の発症率も増えていったのです。

アメリカの神経毒性学雑誌でも、農薬はパーキンソン病のリスクを高めることを発表しています。

アメリカの神経毒性学雑誌でも、農薬はパーキンソン病のリスクを高めることを発表しています。

これは1989年~1999年の研究内容を再評価した結論ですが、この10年間は有機リン系農薬が普及されるようになった時期と重なっているのです。

また、日本でもパーキンソン病の発症数は増加傾向にあります。
1980年~2013年の33年間で、パーキンソン病の発症数は7820人から12万6211人と、16倍も増加。

他にも「ぐにゃぐにゃ乳児」と呼ばれる、体に力が入らない先天性ミオパチーなどの神経・筋疾患を抱える子どもは、2001年の978人から2010年には4272人と、こちらも4倍以上も増加しているのです。

さらにアメリカのハーバード大学の研究では、有機リン系農薬が発達障害の1つADHD(注意欠如・多動性障害)に関連性があることも報告されています。

そして有機リン系農薬だけでなく、アミノ酸系除草剤のグリホサートにも注意が必要です。

発がんリスクを評価するIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートは『ヒトに対して恐らく発がん性がある』と、がんへの影響を危険視しています。

私たちは毎日のように小麦を摂取しています。
農薬が残留しやすい小麦を摂取することで、神経系疾患やがんのリスクを高める危険性もあるのです。

ちなみに、ポストハーベストは輸入食品の劣化防止の目的で使用が認められているため、国産の小麦には使用されていません。
そのため外国産の小麦に比べて、国産の小麦は残留農薬の危険性が低くなります。

農林水産省が調査した残留農薬の結果でも、国産よりも外国産の小麦に残留農薬が多く確認されています。(※参考資料:農林水産省-米麦の残留農薬等の調査結果

残留農薬の危険性を避けるのであれば、国産の小麦を使用した製品を選ぶようにしましょう。

また、小麦製品の中でもパンは朝食や昼食、おやつなどで食べる機会が多く、毎日食べるどころか1日に何度も摂取する場合もあります。

では、パンに関する危険性について見ていきましょう。

パンにマーガリンは塗ってはいけない

パンにマーガリンは塗ってはいけない

朝食にパンを食べる人の中には、毎朝トーストを焼いて食べている人も多いはず。
そのとき、トーストに何を塗っていますか?

代表的なのはバターやマーガリン、ジャムですが、この中で最も避けたいのはマーガリンです。

牛乳の脂肪分から作られるバターとはちがい、マーガリンは植物油脂が原料なのでバターよりも健康的なイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、マーガリンには体に有害なトランス脂肪酸が含まれています。

トランス脂肪酸とは、植物油を水素添加した際に作られる脂肪酸(油の成分)の一種。

トランス脂肪酸は血中に含まれるHDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らし、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やす作用により、動脈硬化のリスクを高めることが確認されています。

特に心臓に血液を送る冠動脈に影響を与え、冠動脈性心疾患を引き起こしやすくするのです。
そのためアメリカやヨーロッパなどでは、トランス脂肪酸の食品への含有量に規制があり、摂取量を抑える対策が取られています。

ところが日本は海外と比べてトランス脂肪酸の摂取量が少ないという理由から、何も規制されていません。

農林水産省の調査では、マーガリンのトランス脂肪酸の含有量は100gあたり0.36~13g。
他の食品と比べて、マーガリンはトランス脂肪酸が多く含まれているのです。

品名調査点数脂質含有量(g/100g)トランス脂肪酸
含有量(g/100g)
バター1381.7~84.71.7~2.2
マーガリン2081.5~85.50.36~13
ファットスプレッド1456.4~79.00.99~10
食用植物油
101000.0~1.7
食用調合油121000.73~2.8
牛脂11002.7
ラード31000.64~1.1
ショートニング31000.64~1.1

ちなみに含有量の差が大きいのは、メーカーによってトランス脂肪酸の低減が推奨されているから。

国による規制はないものの、トランス脂肪酸の有害性は消費者の間でも警戒されるようになり、メーカーごとにトランス脂肪酸の低減化が進められています。

とはいえ他の食品と比べるとトランス脂肪酸の量はまだまだ多いため、毎日摂取するのはもちろん、できる限り摂取しない方が良いでしょう。

また、上記の表ではバターにもトランス脂肪酸が含まれていますが、トランス脂肪酸は牛や羊などの反芻動物(食べたものをもう一度口に戻して咀嚼を繰り返す動物)の体内でも作られます。

ただ同じトランス脂肪酸であっても、有害性が高いのはマーガリンなどに含まれる人工的に作られたトランス脂肪酸だと考えられています。

そのためパンに塗るのは、マーガリンよりもバターの方がおすすめです。

なお、トランス脂肪酸を含んだ水素添加した植物油は硬化油とも呼ばれ、マーガリンなど食品へ使用した場合は『食用精製加工油脂(食用加工油脂)』と表示されます。

トランス脂肪酸はパンにも含まれている

トランス脂肪酸はパンにも含まれている

またマーガリンだけでなく、パン自体にもトランス脂肪酸が含まれているものがあります。

そもそも有害なトランス脂肪酸が作り出されるにも関わらず、植物油に水素添加をおこなう理由は、植物油を固体化するためです。

通常、菜種油などの植物油は常温だとサラサラした液体なので、パンの生地をベタつかせる原因となります。

ところが水素添加した植物油は常温でも溶けずに固体のままなので、生地がベタつく心配がありません。
クロワッサンやデニッシュなどのサックリ感を保つには、欠かせない材料なのです。

そのためマーガリンを塗らなくても、すでにパン自体にトランス脂肪酸が含まれている場合があります。

ちなみにトランス脂肪酸が含まれているかは、原料にショートニングが使用されているか確認することで判断できます。

ショートニングとは、食用精製加工油脂(植物油に水素添加したトランス脂肪酸を含む油)を半固形状にしたもの。
クリーム状で他の食品に練り込みやすいので、パンにもよく使用されています。

またサックリとした食感の役割以外にコクや風味付けの目的として、食パンなどにもショートニングやマーガリンが含まれています。

品名調査点数脂質含有量(g/100g)トランス脂肪酸
含有量(g/100g)
食パン82.8~6.00.029~0.32
食パン52.8~7.10.046~0.27
ロールパン57.9~22.40.14~0.47
クロワッサン617.1~26.60.29~3.0
菓子パン102.9~20.20.039~0.78
菓子パン42.8~13.80.15~0.34
乾パン36.3~8.30.18~0.64
即席中華めん54.4~23.70.024~0.38
即席カップめん54.4~21.20.028~0.16
味付けポップコーン136.813

そのためパンを購入する際は、原料表示を確認するようにしましょう。
ほとんどのパンに、ショートニングやマーガリンが含まれていると思います。

ショートニングやマーガリン不使用の製品や、原料表示は含有量の多い順に記載されているので、表示がある中でも後ろの方にショートニングやマーガリンが記されているものを選びましょう。

なお、パンに含まれるトランス脂肪酸の量は各メーカーでも確認できます。
参照元:山崎製パン-栄養成分表
参照元:Pasco-栄養成分表
参照元:フジパン-安心へのこだわり

さらに、パンに含まれるその他の添加物に危険性はないのか、見てみましょう。

イーストフードや臭素酸カリウムの危険性は?

イーストフードや臭素酸カリウムの危険性は?

パン製品によく見られる『イーストフード不使用』という表示。
わざわざ表示しているため、イーストフードには何か危険性があるのかと思い、調べてみました。

パンを作る際に、生地を発酵させるために酵母(イースト)の働きが重要となるのですが、イーストフードはその酵母の栄養源となるもの。
酵母の栄養源となって発酵をサポートする、添加物の1つです。

イーストフードとして使用が認められている添加物は、塩化マグネシウムや塩化アンモニウム、グルコン酸カリウムなど全部で16品目。

この中から複数の添加物をイーストフードとして使用するため、原料表示では個別名ではなくイーストフードとして一括で表示されています。

添加物と聞くと危険なイメージを持つ人も多いと思いますが、添加物は毎日食べても健康に影響しない量(ADI:1日摂取許容量)の範囲内で使用されています。

その量は、がんやアレルギー、遺伝性などのさまざまな毒性試験の結果をもとに、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が定めた国際基準です。

そのため、食品に含まれる添加物の影響はそれほど心配はないでしょう。
しかし、体に必要なものではないので積極的に摂取する必要はありません。

山崎製パンがカビない理由は、臭素酸カリウムではない

山崎製パンがカビない理由は、臭素酸カリウムではない

また、もう1つよく問題とされるのが臭素酸カリウムです。
臭素酸カリウムも添加物の1つで、パンをふんわり膨らませたり柔らかな食感を作りだす働きがあります。

日本やアメリカでは使用が認められているものの、IARC(国際がん研究機関)では発がん性が疑われていて、EUでは使用が禁止されています。

日本でもほとんど使用されていないのですが、山崎製パンは2014年2月まで『ランチパック』や『芳醇』に臭素酸カリウムを使用していました。

そのことから「ランチパックはカビない。その理由は臭素酸カリウムが使用されているからだ。」という噂が広まり、山崎製パンは危険なパンというイメージが一部の消費者に浸透したのです。

しかし、この噂は真実ではありません。

そもそもIARCによる臭素酸カリウムの発がん性は、その恐れがあるかもしれないという曖昧なもの。

また日本で使用が認められているのも、完成品に臭素酸カリウムが残らないことを前提としたものであって、臭素酸カリウムの影響は受けないと考えられています。

おまけに臭素酸カリウムはパンに柔らかさを与えるものであって、カビを防止するものではありません。

そればかりかランチパックにカビが生えないのは、徹底した衛生管理によって製造されているから。

ランチパックは食パンのカットから包装までの時間が、わずか1分40秒。

ランチパックは食パンのカットから包装までの時間が、わずか1分40秒。引用元:有機肥料を使った土壌づくり

人の手を介さず、機械で自動的に進められています。

人の手が入ると衛生管理に細心の注意を払っても菌が侵入するリスクがあるのですが、全行程を機械でおこなうことで、菌の侵入を徹底的に防止しています。

こうした徹底した衛生管理によってカビを防いでいる訳であって、臭素酸カリウムがカビを防いでいるのではありません。

ちなみに山崎製パンは生産技術の向上にともない、臭素酸カリウムの必要性がなくなったとして、2014年2月に臭素酸カリウムの使用を取り止めています。

以上のことから、パンには他にも添加物が使用されていますが、体への影響を心配する必要はほとんどないでしょう。

まとめ

毎日当たり前のように食べている小麦製品が、もしかすると体に悪影響を与えているかもしれません。

慢性的な疲れや頭痛、下痢、また花粉症などの症状がある人は、一度小麦の摂取を控えて体の様子を確認してみましょう。

また、さまざまな食品に小麦は含まれています。
体調不良を感じていない人も普段自分が食べている食品の原料を確認して、小麦を過剰摂取しないように気をつけましょう。

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