食品偽装は無くならない?外国産食材を国産と偽る表示違反は年間約300件!

食品偽装は無くならない?外国産食材を国産と偽る表示違反は年間約300件!

安価な食材を高級和牛やブランド野菜に見せかけて、消費者をだます「食品偽装」。

最近はニュースで見ることも少なくなり、食品の偽装事件は減っていると思っている人も多いはず。

しかし、じつは今でも年間300件近くの食品の表示違反があるって知っていますか?

原料や産地、賞味期限などの表示ミスが、野菜や米、肉、魚、加工食品など、さまざまな食品で起こっているのです。

そこで食品偽装について調べてみました。
ニュースで報道されない食品偽装について見ていきましょう。

産地の誤表示などの表示違反は、毎年約300件も発生している

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そもそも食品偽装が多発しはじめたのは、2002年頃から。

アメリカ産やオーストラリア産の牛肉を「国産」として販売したり、実際の産地とはちがう産地を表示してブランド食材として偽るなどの食品偽装が、大手食品メーカーや一流ホテル、老舗の料亭といった、あらゆる場所で発覚したのです。

食品偽装が多発した当時に比べると、近年は食品偽装のニュースをほとんど聞かくなりました。しかし食品偽装はなくなった訳ではありません。

アメリカ産の食品を「国産」と表示したり、中国産の食品の産地が記載されていないなどの表示違反が、毎年300件近くも起こっているのです。

そればかりか、その表示違反のほとんどはニュースなどで報道されることはありません。

以前はあれほど報道されたのに、なぜ今は報道されないのか、その理由と表示違反の内容について見ていきましょう。

平成28年度の食品表示の違反数は277件

平成28年度の食品表示の違反数は277件

そもそも食品表示は、多くの人が食品の購入時に参考にする重要な情報。

その内容は、食品に含まれる栄養素やアレルギー物質、内容量、原産地、遺伝子組み換え食品の使用有無、賞味期限など、体への影響が心配される情報ばかりです。

そのため、これらの内容は食品に表示する義務が設けられています。

さらに2015年4月には、食品の安全性確保と消費者がより食品を選択しやすいことを目的に食品表示法が施行。消費者庁・国税庁・農林水産省による、食品表示基準の調査が毎年実施されるようになりました。

しかし調査の結果、平成28年度(2016年4月~2017年3月)だけで、表示違反の指導を受けた数が277件もあったのです。

中国産の野菜が国産?無名の牛肉が国産のブランド和牛?

中国産の野菜が国産?無名の牛肉が国産のブランド和牛?

食品の表示違反で最も多かったのは、「原産地の誤表示・欠落」。違反件数は277件中146件と全体の半数以上を占めています。

アメリカ産の牛肉を国産と表示したり、中国産食材の産地を表示しないなど、実際とはちがう産地の表示や、何も産地を表示しない産地不表示などの違反行為です。

このような産地表示の違反が、今も年間100件以上起こっているのです。

また産地表示以外では、原材料や名称の誤表示や不表示などの表示違反が発生しています。

平成28年度の食品表示の違反内容の詳細は、下記のとおりです。

食品表示の違反内容

違反理由件数
原産地の誤表示・欠落
146
原材料名の誤表示・欠落81
名称の誤表示・欠落27
その他31

※H28年度(上・下半期)の合計

ちなみに、食品の表示違反は野菜や果物、魚介類が多い傾向があるものの、米や肉を含むすべての品目で、生鮮食品や加工食品に関係なく発生しています。

ちなみに、食品の表示違反は野菜や果物、魚介類が多い傾向があるものの、米や肉を含むすべての品目で、生鮮食品や加工食品に関係なく発生しています。

下記は各品目の発生件数の内わけです。(1件で複数の違反指導を受けたケースもあるため、各食品の件数と合計件数は一致しません。)

食品表示違反の指導件数

食品の種類件数
生鮮
食品
野菜
果物
46
12
33
魚介類41
加工
食品
農産
加工品
46
畜産
加工品
16
水産
加工品
58
その他の
加工品
43
合計277

※H28年度(上・下半期)の合計

なお、食品表示違反の「指導」とは、食品表示基準の違反に常習性がなく、過失による一時的なものと判断できるもの。

さらに違反の表示内容をすぐに訂正し、表示に誤りがあったことを速やかに情報提供している場合におこなわれる行政指導です。

指導の場合は食品の回収や営業停止などの処分はなく、簡単に言えば厳重注意という程度。

しかし違反内容を確認してみると、本当に不注意の表示ミスなのか疑わしい内容もあるのです。

しかし違反内容を確認してみると、本当に不注意の表示ミスなのか疑わしい内容もあるのです。

平成28年度に実際にあった、食品表示の違反内容を見てみましょう。

【平成28年度:食品表示の違反内容】

  • アメリカ産の豚肉を「国産」と表示
  • 鹿児島産の牛肉を「山形牛」と表示
  • コシヒカリと別の品種のブレンド米を「コシヒカリ」とだけ表示
  • 中国産のにんにくを「青森県産」と表示
  • メキシコ産のマグロを「長崎県産」と表示
  • 中国産のウナギを「愛知県産」と誤認させる表示
  • インドネシア産のウナギを「愛知県産」と表示
  • 中国産のホッケの干物の産地を不表示
  • ※その他合計277件

参照元:消費者庁-食品表示法等pdf一覧

上記の内容はごく一部で、表示違反の指導を受けた277件の中には、熊本県産の大根を「国産」と表示したり、スペイン産の豚肉を「SPAIN」と表示するなど、単純な表示ミスも確かにあります。

そのような単純な表示ミスは、消費者がその誤りを知っても食品に対するイメージが悪くなることはほとんどありません。

しかし、上記のようにアメリカ産の豚肉を国産と表示したり、無名の牛肉をブランド牛と表示する違反内容は、食品に対するイメージを大きく変える可能性があります。

ところが表示違反の内容に関係なく、表示違反の処分が「指導」で処理されたものに関しては、違反の事実がおおやけになることはほとんどないのです。

常習性がなく、表示違反をすぐ訂正するなどの対応を取っていることから、違反の多くは店頭やウェブサイトでしか告知されないのです。

常習性がなく、表示違反をすぐ訂正するなどの対応を取っていることから、違反の多くは店頭やウェブサイトでしか告知されないのです。

平成28年度の表示違反277件のなかで、会社などが世間に知らせるために出す社告で情報提供したのは、わずか1件。

残りは店頭告知が最も多く203件、自社のウェブサイトで告知が45件、手紙や訪問などの告知が46件と、一部の告知で済まされています。

このように、常習性がなく悪質でないと判断されているとはいえ、産地表示ミスなど食品偽装に近いことは今も頻繁に起こっていて、その情報は一部にしか伝わっていないのです。

ブラジル産の鶏肉は、発がん性物質が含まれている?

ブラジル産の鶏肉は、発がん性物質が含まれている?

また、食品偽装は国内だけの問題ではありません。2017年3月には、ブラジルの大手食肉会社21社に食品偽装の不正が発覚しました。

その内容は腐った鶏肉を使用していたばかりか、腐敗臭や見た目の悪さをごまかすために発がん性のある化学物質を肉に混ぜていたのです。

ちなみに日本の食肉の自給率は牛肉が約4割、豚肉は約5割に対して、鶏肉は約8割。鶏肉はほとんどが国産なので、影響は少ないように思えます。

しかし輸入に頼る残り2割の鶏肉は、約8割がブラジル産なのです。

そのため、日本に流通するブラジル産の鶏肉にも発がん性物質が含まれている可能性があるとして、厚生労働省は調査を実施。

参照元:厚生労働省-ブラジルでの食肉の不正事件について

その結果、不正がおこなわれていた食肉会社21社のうち、日本に鶏肉を輸出していたのは1社だけでした。

また日本に輸出していた1社の摘発理由は、会計の不正操作。

腐敗した肉や発がん性物質の使用などの問題はなかったため、厚生労働省は日本に流通するブラジル産の鶏肉を摂取しても体に影響はないと結論づけています。

ただ、今回は影響がなかったものの、日本は多くの食品を海外から輸入しているため、今後もこのような事件が発覚する可能性は大いに考えられます。

食品の自主回収は年々増加している

食品の自主回収は年々増加している

食品偽装の報道が少なくなった一方で、ゴムや髪の毛などの異物混入による食品の自主回収のニュースをよく聞くようになりました。

じつは、今までは食品に髪の毛や昆虫などの異物が混入していても、当事者間で解決されることがほとんどでした。

異物混入の回収対象とされたのは、体に与える影響が高いと考えられる病原菌や食中毒菌、化学物質など。

一方、髪の毛や昆虫、ビニールなどは体への影響は低いとして、回収ではなく当事者間で解決する対応が取られていたのです。

食品の異物混入時の対応

回収当事者間で解決
体への影響が
高い
体への影響が
低い
病原菌
食中毒菌
化学物質
髪の毛
昆虫
ビニール

しかし近年はSNSの普及により、髪の毛や昆虫などの混入状況を消費者がインターネットで拡散するケースが増え、自主回数の件数が年々増加しています。

FAMIC(農林水産消費安全技術センター)の調査では、食品の自主回収件数が急増したのは平成19年度。回収件数は前年の倍以上を上回る839件にものぼっています。

その後も回収件数は一定数を保ち続け、平成26年度(2014年4月~2015年3月)の自主回数件数は1,014件にまで増加しています。

その後も回収件数は一定数を保ち続け、平成26年度(2014年4月~2015年3月)の自主回数件数は1,014件にまで増加しています。

参照元:農林水産省-食品自主回収件数一覧データpdf

ただし、自主回収の理由で最も多いのは異物混入ではありません。

昆虫や金属片などの異物混入はSNSなどで画像を確認できるケースが多く、頻繁に起こっているように感じます。

しかし自主回収の理由で最も多いのは、賞味期限やアレルギーの原因食品などの表示間違いなのです。

FAMICが調査した、平成26年度に自主回収された1,014件の回収理由は下記のとおり。

食品の自主回収理由

回収理由件数
表示不適切472
異物混入153
品質不良131
規格基準
不適合
124
その他105
容器・包装
不良
29
合計1014

参照元:農林水産省-食品の自主回収情報

じつは自主回収される食品の約半分が、表示不適切が理由で回収されているのです。ちなみに、表示不適切の詳しい理由も確認しておきましょう。

表示不適切の詳細

回収理由件数
期限表示まちがい244
アレルギー表示まちがい138
添加物表示まちがい22
その他の表示不適切68

このなかで、特に注意が必要なのが「アレルギー表示まちがい」です。

食物アレルギーを持つ人は、アレルギーの原因食品の有無を食品の表示内容で判断します。

その表示が間違っていると、アレルギーを起こす食品が含まれているものを誤って摂取してしまう危険性があるのです。

さらに問題なのが、自主回収された食品で最も多い品目が菓子類ということ。平成26年度に自主回収された食品では、全体の約3割がお菓子でした。

さらに問題なのが、自主回収された食品で最も多い品目が菓子類ということ。平成26年度に自主回収された食品では、全体の約3割がお菓子でした。

なぜお菓子が多いのが問題かというと、食物アレルギーの発症者は大人よりも子どもが多いから。

そのため、アレルギー表示間違いのお菓子を子どもが誤って摂取する危険性があるのです。

過去には、食品表示を確認したうえで小麦アレルギーを持つ幼児に母親が食品を与えたところ、幼児は呼吸困難を起こして、一時心肺停止状態に陥る事故も発生しています。

このように食品表示は私たちの健康に関わる重要な情報です。そのため表示ミスの可能性があるとはいえ、表示を確認するのは大切です。

このように食品表示は私たちの健康に関わる重要な情報です。そのため表示ミスの可能性があるとはいえ、表示を確認するのは大切です。

ただ、残念ながら私たちが表示ミスを見抜くことはできません。そのため信頼できるメーカーや業者から購入すること。

また少しでも異変を感じたら摂取するのは止めましょう。

まとめ

食品偽装のニュースは少なくなりましたが、今も300件近くの表示違反が発生しています。

自分が口にするものはどんなメーカーや業者が関係しているか、食品の背景を知ることも安全な食を守る1つの方法です。

信頼できるところから購入するのはもちろん、表示内容もしっかり確認して安心して食事を楽しめるようにしましょう。

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