食品添加物の危険性は心配無用?がん・アレルギー・胎児への影響は?
ご飯を作る時間がなかったり、簡単に済ませたいときに頼りになるのが、レトルトなどの加工食品。
しかし、原料を見るとカタカナ名の食品添加物がびっしり表示されていて、何となく家族に申し訳ない気持ちになったことってありませんか?
食品添加物はレトルト食品やパン、お菓子、調味料など、多くの食品に使用されている反面、がんやアレルギーといった、体への影響を危険視する声もあります。
とはいえ、さまざまな食品に使用されている添加物を完全に避けるなんて、現実的に無理そう…。
そこで、どのくらい食品添加物に注意すれば良いのか、食品添加物の危険性や使用基準について調べてみました。
添加物の危険性は問題ない?
結論からいうと、食品添加物による体への影響は問題ありません。
私自身、食品添加物は体に危険なイメージがあり、食品添加物をできる限り避けたいと考えていました。
ところが食品添加物について調べた結果、過剰に心配する必要はないと分かったのです。
とはいえ食品添加物は体に必要な成分ではなく、今後もできる限り避けたいと思っています。
では、食品添加物が問題ないことを確認する前に、よく耳にする食品添加物の危険性について簡単にチェックしておきましょう。
食品添加物の主な危険性は、3つあります。
それは、発がん性・胎児奇形(催奇形性)・アレルギーへの影響です。
発がん性
発色剤の亜硝酸ナトリウム、着色料の赤102号・黄4号(タール系)やカラメル色素、人口甘味料のアスパルテーム・アセスルファムK、保存料のソルビン酸・安息香酸ナトリウム、酸化防止剤のBHAなど。
これらはすべて発がん性の疑いがある食品添加物です。
特に危険視されているのは、ベーコンなどの加工肉の発色剤として使用される亜硝酸ナトリウム。
亜硝酸ナトリウムは肉や魚などのタンパク質と結びつくと、ニトロソアミン(ニトロソ化合物)という発がん性物質を発生させます。
そのため発色剤を使用した加工肉は、豚肉のタンパク質と発色剤の亜硝酸ナトリウムを同時に摂取するので、体内に発がん性物質を発生させる危険があるのです。
2015年、発がんリスクを評価するIARC(国際がん研究機関)は、亜硝酸ナトリウムを使用するベーコンやハムなどの加工肉を「グループ1-ヒトに対して発がん性がある」と発表。
加工肉の発がん性の原因は、亜硝酸ナトリウムの影響だけとは断定されていませんが、加工肉が評価されたグループ1は5段階評価の1番上、最も発がんリスクが高いと考えられています。
そのため、この発表をきっかけに亜硝酸ナトリウムへの警戒心は一気に強くなりました。
続いて、胎児への影響について見ていきましょう。
胎児奇形(催奇形性)
食品添加物は、胎児にも悪影響を及ぼすと考えられています。
妊娠中の母親が摂取すると、胎児に奇形が起こる催奇形性(さいきけいせい)のリスクが高まるというのです。
注意が必要な添加物は、先ほどお話した発がん性の疑いがある添加物に加え、化学調味料のグルタミン酸ナトリウム、防カビ剤のOPPやTBZ、乳化剤など。
特に注意が必要とされているのが、妊娠4週~12週末までの期間。
この時期は胎児の脳神経や心臓、手足、目、鼻などが形成されるため、細胞分裂が活発なことから食品添加物の影響を受けやすいと考えられています。
続いて、アレルギーへの影響について見ていきましょう。
アレルギー
発がん性が疑われる添加物の多くは、アレルギーを誘発させる危険性も心配されています。
特に危険視されているのは、タール系着色料の黄4号、人工甘味料のアスパルテーム、保存料の安息香酸ナトリウム、酸化防止剤の亜硫酸塩など。
アレルギーを引き起こしたり、症状を悪化させると考えられています。
また、化学物質過敏症に影響する不安もあります。
化学物質過敏症とは、建物の塗装剤やカビ、ダニ、洗剤、農薬、化粧品などに使用されている化学物質に反応して、めまいや嘔吐、頭痛、耳鳴り、気力低下といった体にあらゆる不調を引き起こす病気。
食品添加物は化学的に合成して作られるものがほとんどのため、化学物質過敏症になると食品添加物にも反応する恐れがあるのです。
以上が、食品添加物の摂取によって引き起こされると考えられている、体への影響です。
しかしこれらの危険性は、食品添加物を摂取したら絶対に起こるものではありません。
では、その理由を見ていきましょう。
添加物は危険じゃない?
食品添加物の中には、がんやアレルギーに作用すると考えられているものがあります。
しかし、それでも問題ないといえるのは、食品添加物は一生毎日食べ続けても健康に影響しない許容量(ADI:1日摂取許容量)が定められているからです。
このADIを設定したのは、WHO(国際保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)によるJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)。
食品添加物は、国際基準で使用量が決められているのです。
なお、ADIは動物実験で毒性が確認されなかった量から、さらに1/100に減らしたもの。
これは食品添加物への反応に個体差が生じても問題ないように、より安全性を考慮して設定されているのです。
さらに厚生労働省は安全性を高めるため、食品への使用量はADIの値よりも十分下回るように使用基準を設定。
そのため、ほとんどの添加物はADIの1%以下、多くても数%しか私たちは摂取していないのです。
ですから、毒性が発生する値を超えないどころか、さまざまな加工食品を摂取しても、1日の許容量を超えることはありえません。
なお、長期的な摂取や発がん性についても、きちんと試験がおこなわれています。
発がん性や長期的な影響は?
毒性のない値を確認するための実験は、28日間・90日間・1年間と3つの期間が設定されています。
ラットなどの動物に繰り返し与えて、それぞれの体への影響を確認し、より危険性のない確実な値を導き出しているのです。
発がん性においては、一生涯にわたり動物に添加物を与え続けて、発がん性の有無を調査。
遺伝子や染色体への影響、がん細胞へ突然変異する変異原性を調べる試験もあります。
この他にも繁殖機能や胎児・新生児への影響、アレルギー反応、体内での吸収・代謝など、いくつもの試験によって、危険性の有無が確認されています。
このように、食品添加物はいくつもの試験と国際基準によって、体への影響は問題ないと認められているのです。
とはいえ、添加物に限らず100%安全な食品はありません。
添加物の中には、後になって体への影響が発覚したケースがあるのです。
天然添加物は、合成添加物より危ない?
添加物として使用が認められた後に、新たな体への影響が発覚した添加物は2つあります。
それはアカネ色素と人工甘味料(アスパルテームやアセスルファムKなど)です。
まずは、アカネ色素について詳しく見ていきましょう。
2004年、着色料として使用されていたアカネ色素に発がん性が発覚。
アカネ色素は、突然使用が禁止されました。
なぜ、使用が認められていたアカネ色素から発がん性が発覚したかというと、これには添加物の種類が大きく関係しています。
添加物の種類は、大きく分けて2つあります。
それは指定添加物と既存添加物(天然添加物)です。
指定添加物は、厚生労働省によって安全性が確認されている添加物のこと。
先ほどお話した、いくつもの毒性試験によって危険性の有無が確認され、ADI(1日の摂取許容量)が定められています。
■指定添加物の種類
日本食品添加物協会:指定添加物一覧pdf
一方、既存添加物は植物などの自然由来の添加物のため、天然添加物とも呼ばれています。
■既存添加物の種類
日本食品添加物協会:既存添加物一覧pdf
(指定添加物・既存添加物、どちらも2016年10月時点の登録数)
指定添加物と既存添加物の大きなちがいは、安全性の評価方法。
じつは既存添加物の安全性は毒性試験によって確認されておらず、長期に渡って使用されていた実績から安全性が認められているのです。
1995年、食品衛生法の改正後は既存添加物にも毒性試験が必要とされ、そこで発覚したのがアカネ科の植物を原料とする、アカネ色素の発がん性だったのです。
ちなみに、2016年10月時点で登録されている既存添加物は、365品目。
そのうち249品目は安全性の見直しが完了しています。
ただし、残りの約100品目は安全性を確認中のものや、原料からみて安全と判断できるため早急に確認する必要はないと、チェックされていないものもあります。
人工的に製造される指定添加物のほうが、天然素材を利用して作られる既存添加物より危険なイメージがありましたが、実際は天然由来の既存添加物のほうが安全性に対するチェックは甘かったのです。
とはいえ、既存添加物(天然添加物)であっても、好き勝手に使用できるわけではありません。
ADI(1日の摂取許容量)が設定されていない添加物を使用する場合は、製造者が品質の安全性に責任を持って使用することが決められています。
そのため、天然由来の添加物は危険ということではありません。
続いて、人口甘味料について見ていきましょう。
人工甘味料や防腐剤の危険性は?
アスパルテームやアセスルファムKなどの人工甘味料は、いくつもの毒性試験によって体に害を与えない許容量のもと、食品添加物として使用されています。
これらの人工甘味料は、糖尿病や肥満のリスクとなる血糖値の上昇に影響しないため、糖尿病患者や肥満傾向の人も安心して摂取できる甘味料として、さまざまな食品に使用されています。
ところが2014年、イギリスの科学誌「ネイチャー」は、人工甘味料は腸内細菌に影響を与えて血糖値を上昇させると発表。
人工甘味料は血糖値の上昇に作用していたのです。
ただし、腸内細菌は個人差があるため、人工甘味料による血糖値への影響も人によって差があるとも、同時に報告しています。
いくつもの毒性試験で危険性の有無は確認されていますが、個人差のある腸内細菌の影響までを完全に確認することは不可能。
そのため、食品添加物として認可されてから、このような体への影響が新たに発覚したのです。
(※人工甘味料の危険性については、こちらをご覧ください)
また人工甘味料だけでなく、保存料(ソルビン酸・安息香酸ナトリウムなど)も腸内細菌への影響が心配されている添加物のひとつ。
保存料は細菌の増殖やカビの発生を抑えて、食品の保存性を良くするために使用されます。
しかし、細菌やカビを抑制する作用が、腸内細菌の活動にまで影響を与えるのではないかと考えられているのです。
ただ、保存料による腸内細菌への影響についてFSIN(食品安全情報ネットワーク)は、体への悪影響はないとコメントしています。
その主な理由は、食品に使用される保存料が微量なこと。
食品に使用される保存料は、微生物の増殖を抑えるための必要最低限の量しか使用されていません。
体内に入った保存料は唾液や他の食品で希釈され、大腸まで到達する量はさらに少なく、腸内細菌に悪影響を与えるほどの力はないため、保存料による腸内細菌への影響は問題ないと考えられています。
では、添加物を何種類も摂取することで、新たな影響が引き起こされる複合毒性(影響)の危険はないのでしょうか?
複合毒性(影響)について
数種類の添加物を同時に摂取したり、農薬や遺伝子組み換え作物など、他の影響との掛け合わせで引き起こされる、複合毒性(複合影響)については、食品安全委員会は現実的に起こる可能性は低く、問題ないとしています。
ひとつひとつの安全性を確認して設定されるADI (1日の摂取許容量)は、添加物だけでなく農薬にも適用されています。
そのため、安全性が確認されたものが掛け合わさるので、危険性はないとのこと。
複合影響の可能性は100%無いとは言えないものの、現実に起こる可能性は極めて低いと考えられています。
以上のことから、食品添加物によって体に悪影響が起こる危険性は、かなり低いと判断できます。
ただ、食品添加物は栄養素ではないので、本来なら摂取しなくていいもの。
有害性はないとしても、人工甘味料のように体に影響を及ぼす可能性は、他の添加物にもあるかもしれません。
そのため完全拒否するほど過敏になる必要はありませんが、体に必要ない添加物はなるべく摂取しないように心掛けるほうが安心です。
では最後に、添加物の種類と表示について見ていきましょう。
添加物の種類
添加物は原料のかさ増しや、見栄えのごまかしなど、生産者側の利益のために使用される悪いイメージがありますが、じつは添加物にはそれぞれ使用目的があります。
添加物の種類と使用目的
種類 | 使用目的 | 主な添加物 |
---|---|---|
保存料 | 細菌の増殖・カビの発生を抑制して食中毒を防ぐ | ソルビン酸 |
着色料 | 食品に色をつける | 食用赤色102号 |
甘味料 | 食品に甘味をつける | アスパルテーム |
発色剤 | 食品の黒ずみを防ぎ、色味を整える | 亜硝酸ナトリウム |
漂白剤 | 食品を白く漂白して、キレイにする | 亜硫酸ナトリウム |
酸化防止剤 | 油脂の酸化を防いで、食品の劣化を抑える | エリソルビン酸Na |
防カビ剤 | 柑橘類のカビの発生を防ぐ | チアベンダゾール |
増粘剤・糊剤 安定剤・ゲル化剤 | 食品にとろみや粘り気を与え、分離を防止する | ペクチン |
以上の目的で使用される添加物は、消費者の関心が高いと考えられていますが、ソルビン酸や亜硝酸ナトリウムなどの添加物名だけでは、使用目的が分かりません。
そのため、消費者も使用目的が理解できるように、「保存料(ソルビン酸)」など、必ず使用目的を表示することが決められています。
また上記の添加物以外に、複数の添加物を組み合わせて効果を発揮する添加物については、ひとつずつ名前を表示せず、一括名での表示が認められています。
一括表示ができる添加物
一括名 | 使用目的 |
---|---|
酸味料 | 食品に酸味をつける |
香料 | 食品に香りをつける |
pH調整剤 | 食品のpH(酸性・アルカリ性)を調整し、品質を高める |
乳化剤 | 水と油を均一に混ぜ合わせる |
膨張剤 | ケーキなどを膨らませて、ソフトにする |
イーストフード | パンなどのイーストの発酵を良くして、ふっくらさせる |
ガムベース | ガムの基材となる |
チューイングガム軟化剤 | ガムをやわらかくする |
豆腐用凝固剤 | 豆乳を固めて、豆腐を作る |
かんすい | 中華めんの風味や、食感を出す |
苦味料 | 苦味をつける |
光沢剤 | 食品にツヤを出す、食品保護の効果もある |
酵素 | 食品の品質を改善する |
調味料 | 食品にうま味を加え、味を調整する |
一方、下記の条件下では添加物の使用表示は免除されています。
添加物の使用表示が免除される場合
表示の免除 | 免除の理由 |
---|---|
加工助剤 | 製造工程で除去・分解されるため、食品にほとんど残らない |
キャリーオーバー | 原料には含まれるものの、微量のため作用効果はない |
栄養強化剤 | 食品にもともと含まれる成分、WHOも添加物として扱っていない |
小包装商品 | 商品自体が小さく、表示面積(30cm2以下)が確保できない |
バラ売り食品 | 包装されていないため、表示できない |
加工助剤とは、加工食品に使用される野菜の殺菌や漂白などで使用される添加物のこと。
食品の加工途中で中和・分解・辞去されるため、完成した食品への残留が少なく、体に影響を与えるものではないと表示が免除されています。
キャリーオーバーは、加工食品に使用される醤油などの調味料に含まれる添加物です。
こちらも加工助剤と同じく、添加物が含まれる醤油を使っても、その添加物が体に影響を及ぼす危険性は低いため、表示不要となっています。
また、無添加と表示された食品を選ぶ場合もあると思いますが、無添加の表示にはさまざまな意味があります。
無添加って、本当に無添加?
食品添加物は危険というイメージから、無添加や不使用などの表示がある食品の方が安全な気がしますよね。
しかし、「化学調味料不使用」や「保存料無添加」と表示されている食品の中には、他の添加物で代用している場合があります。
そのため、無添加や不使用と表示されていても、完全に添加物を使用してないわけではありません。
無添加の表示だけで選ぶのではなく、何が無添加・不使用なのかチェックしてから購入するようにしましょう。
まとめ
危険なイメージの食品添加物でしたが、さまざまな毒性試験や国際基準によって、体に影響のないように使用されていました。
とはいえ、私たちはどんな材料や調味料、添加物を使って作られているか気にすることなく、加工食品を利用しているのは問題かもしれません。
食品添加物に大きな危険性はなくても、自分や家族が食べる食品に何が使用されているのか、きちんと理解した上で利用していきたいものです。
ただ食品添加物は体に必要のないものなので、できるだけ摂取量を減らせるようにも心掛けていきましょう。