痛風はプリン体の多い食品を減らすだけでは効果なし?尿酸値を下げる食事とは

痛風はプリン体の多い食品を減らすだけでは効果なし?尿酸値を下げる食事とは

風が吹くだけで激痛が走る「痛風」。
じつは成人男性の5人に1人が、痛風予備軍だといわれています。

痛風の原因は、体内に尿酸が溜まること。
そのため、尿酸のもととなるプリン体が多いレバーや白子、あん肝などを控えることが、重要だとされています。

しかし、プリン体が多い食品を控えるだけでは、痛風を予防できないって知っていますか?

そこで、痛風と食事の関係について調べてみました。
食品から摂取するプリン体が痛風にどのくらい影響するのか、また痛風の予防に効果的な食事について確認しましょう。

プリン体の多いレバーや白子を控えても、痛風は防げない

プリン体の多いレバーや白子を控えても、痛風は防げない

そもそも痛風は、血中に含まれる尿酸の増えすぎが原因。

尿酸は老廃物の1つなので、本来は尿と一緒に体外に排出されます。

しかし尿酸がうまく排泄されなかったり、尿酸が体内で過剰に作られると、結晶化した尿酸が体内にどんどん溜まっていくのです。

結晶化した尿酸が体内に増えすぎると、免疫細胞が尿酸の結晶を異物だと判断し攻撃。その攻撃時に発生する炎症物質によって、激しい痛みや腫れなどの痛風が引き起こされるのです。

ですから痛風を防ぐには、体内の尿酸を増やさないこと。

そこで重要となるのが、尿酸の材料であるプリン体です。尿酸はプリン体が分解されたものなので、プリン体の摂取を抑えれば痛風を予防できます。

プリン体が多く含まれるレバーや白子、あん肝、魚の干物など。これらの食品を控えることが、痛風の予防に効果があると考えられていました。

しかしプリン体が多い食品の摂取を控えても、痛風の予防にはあまり効果がなかったのです。

プリン体はどんな食品にも含まれている

プリン体はどんな食品にも含まれている

そもそも痛風を引き起こす直接的な原因は、食べ過ぎや肥満、運動不足、ストレスなど。プリン体の多いレバーや白子などの食べ過ぎが、痛風を引き起こしているわけではありません。

もちろんプリン体が多い食品を摂取すると尿酸値は上がりやすくなるので、注意は必要。

ただ、食品に含まれるプリン体の量を気にするより、まず注意が必要なのは「食べ過ぎないこと」です。

なぜなら、プリン体はほとんどの食品に含まれているから。そのため、どんな食品も食べ過ぎは、プリン体の過剰摂取につながります。

食品中のプリン体の量(100gあたり)

極めて多い
(300mg以上)
レバー(鶏)、あん肝(酒蒸し)
白子、マイワシ干物など
多い
(200~300mg)
レバー(牛・豚)、マイワシ、カツオ
干物(アジ・サンマ)、大正エビなど
少ない
(50~100mg)
豚バラ、牛タン、ウナギ
ホウレン草、カリフラワーなど
極めて少ない
(50mg以下)
キャベツ、トマト、豆腐、牛乳、白米
パン、かまぼこ、チーズなど

参照元:痛風財団-食品中プリン体含量pdf

ちなみに痛風の予防には、プリン体の1日の摂取量を400mgまでに抑えること。

鶏レバーやあん肝は、プリン体が100gあたり300mgも含まれているので、大量に摂取すると1日の摂取量を簡単に超えてしまいます。

ただ、レバーやあん肝などを1日に大量に摂取したり、毎日連続して食べることはほとんどありません。

それよりもプリン体が多い食品を控えたことに安心して、他の食品を毎日お腹いっぱい食べると、結果的にプリン体を多く摂取する危険性があるのです。

また、食べ過ぎは肥満を引き起こしますが、肥満と痛風は密接に関わり合っていると考えられています。

かつて痛風は「ぜいたく病」と呼ばれていたように、痛風のリスクを高める最大の原因は食べ過ぎなのです。

ビール以外のアルコールも尿酸値を高める

ビール以外のアルコールも尿酸値を高める

また食べ過ぎと同じく、飲み過ぎも痛風のリスクを高めます。

特にビールはアルコール類の中でもプリン体が多く含まれているため、尿酸値が気になる人は、プリン体の量を減らした「プリン体カットのビール」を摂取している人もいるはず。

しかしビールや焼酎、ワインなどの種類に関係なく、アルコールは体内の尿酸を増やす作用があるのです。

そもそも尿酸のもととなるプリン体は、食品だけでなく体内でも作られています。

その割合は食品由来のプリン体が2割に対して、体内で作られるプリン体の割合は8割。体内で作られるプリン体のほうが圧倒的に多いのです。

アルコールには、尿酸の体内合成を促す作用と、尿酸の排泄を抑える作用があるのです。

そのためアルコール類を過剰摂取すると、体内に尿酸がどんどん溜まっていき、痛風を発症する危険性が高まります。

またプリン体の量を減らしたビール類の中には、人工甘味料が含まれている製品もあります。

人工甘味料は摂取量が多くなるほど、脳卒中や認知症を発症するリスクが高まるとも考えられていて、体への影響が心配です。

体への影響を気にしながらプリン体の摂取量を抑えるよりも、プリン体が含まれる量に関係なく、暴飲暴食をやめて腹八分の食事を心掛けるほうが痛風を予防できます。

体への影響を気にしながらプリン体の摂取量を抑えるよりも、プリン体が含まれる量に関係なく、暴飲暴食をやめて腹八分の食事を心掛けるほうが痛風を予防できます。

まずは食事の摂取量を抑え、そのうえでプリン体の多い食品を控えるほうが、痛風の予防に効果的です。

【痛風の注意点】

  • 痛風の最大の原因は「食べ過ぎ・飲み過ぎ」
  • 食品中のプリン体の量は、それほど気にしなくていい
  • ビール以外のアルコール類も尿酸値を上げる

ちなみに食品中に含まれるプリン体は、調理で減らすことができます。

プリン体は水に溶ける水溶性の性質のため、「ゆでる・煮る・蒸す」などの調理法で食品に含まれるプリン体を落とすことができるのです。

ただ、ゆで汁や煮汁の中には食品から溶け出たプリン体が含まれています。鍋物料理の最後につくる雑炊などでは、お鍋に溶け出たプリン体を丸ごと摂取することになるので注意しましょう。

インスリンは尿酸値の排泄を低下させる

インスリンは尿酸値の排泄を低下させる

また糖質が多く含まれる食品も、尿酸値を高める原因になります。

なぜなら、ご飯やパンなどの糖質の多い食品を摂取すると、血糖値(血中のブドウ糖の値)が上昇するのですが、血糖値を下げるホルモン「インスリン」は、尿酸値の排泄機能を低下させる作用があるからです。

そのためインスリンが大量に分泌されないように、血糖値の急上昇を抑える必要があります。

血糖値を抑えるポイントは、下記の3つ。

血糖値の上昇を抑えるポイント

  • 食事は野菜から食べる
  • お米やパン、麺類は食事の最後に食べる
  • 清涼飲料水を頻繁に飲まない

まず野菜は糖質の量が少ないため、食事のはじめに摂取すると血糖値の上昇を抑えることができます。

反対に糖質の多いお米やパン、麺類などの炭水化物は、血糖値を上げやすいため、食事の最後に食べるのが鉄則。

ちなみに、食品が血糖値の上昇にどのくらい影響しているかは、食品のGI値で判断できます。

GI(グリセミック・インデックス)値とは、ブドウ糖の摂取による血糖値の上昇度100を基準とし、食品がそれぞれ血糖値の上昇にどのくらい影響するか示したもの。

GI値が70以上の食品が血糖値を上げやすい高GI食品で、GI値が55以下の食品は血糖値が上がりにくい低GI食品です。

【高GI食品】お米やパン、麺類、イモ類など
【低GI食品】イモ類以外の野菜や肉、魚、海藻類など
参照元:ダイエットと料理レシピ-食品別GI値

また清涼飲料水に含まれる「果糖ぶどう糖液糖」も、血糖値を急上昇させます。

お米やパンに含まれる糖質は、体内でブドウ糖に分解され、そのブドウ糖が血中に吸収されることで血糖値を上昇させます。

一方、清涼飲料水に含まれる果糖ぶどう糖液糖は、すでにブドウ糖に分解されています。そのため摂取すると血中にすぐ吸収され、血糖値を急速に上昇させるのです。

血糖値が急上昇するほど、インスリンは大量に分泌されるため、尿酸がより排泄しにくくなるのです。

血糖値が急上昇するほど、インスリンは大量に分泌されるため、尿酸がより排泄しにくくなるのです。

果糖ぶどう糖液糖は炭酸飲料だけでなく、ジュースや紅茶飲料などにも含まれています。意識しないまま摂取している場合も多いので、ジュースや炭酸飲料を習慣的に摂取するのは控えましょう。

牛乳やヨーグルトは、尿酸の排出をうながす

牛乳やヨーグルトは、尿酸の排出をうながす

ちなみに痛風を発症する6割以上の人が、尿酸の排泄機能が低下していると考えられています。

痛風には、下記の3つのタイプがあります。

【痛風のタイプ】

  • 尿酸排泄低下型(発症率60%)
  • 尿酸酸性過剰型(発症率12%)
  • 混合型(発症率25%)

1番の尿酸排泄低下型は、尿酸の排泄機能が低下しているため尿酸をうまく排泄できないタイプ。

2番の尿酸酸性過剰型は、尿酸の排泄機能は低下していないが、尿酸が体内で過剰につくられるため、尿酸値が高くなるタイプ。

3番の混合型は1と2のどちらの症状もあり、体内で尿酸が過剰につくられ、それをうまく排泄できないタイプです。

この3つのタイプのうち、最も多いのが1番の尿酸排泄低下型。痛風を発症する人の6割以上が、尿酸の排泄機能が低下しているのです。

そこで積極的に摂取したいのが乳製品。牛乳やヨーグルトなどの乳製品には、尿酸の排泄を促す作用があるのです。

乳製品を毎日摂取すると尿酸の排泄がスムーズになるため、尿酸値の上昇を抑えることができます。

また尿酸は主に腎臓から排出されますが、一部は腸からも排出されます。

腎臓と腸は、お互いに影響しあう「腸腎連関」という関係。どちらかの機能が低下すると、もう一方の機能も低下する傾向があります。

腎臓と腸は、お互いに影響しあう「腸腎連関」という関係。どちらかの機能が低下すると、もう一方の機能も低下する傾向があります。

そのためヨーグルトや漬物などの発酵食品を摂取して、腸内環境を整えることも必要。

腸内環境を改善すれば腸の機能が高まり、腎臓の機能を高めることに繋がる可能性があります。腸と腎臓のどちらの機能も高まれば、尿酸の排出低下を予防できます。

以上のように、痛風を予防するには食生活を改めることが大きなポイントです

尿酸値が高いまま放置すると、いきなり痛風に襲われる

尿酸値が高いまま放置すると、いきなり痛風に襲われる

ところで、尿酸値が高くても痛風を発症したことがないからと、そのまま放置している人はいませんか?

痛風は尿酸値が7.0mg/dlを超える高尿酸血症になると、発症するリスクが高まります。ただ、尿酸値が7.0 mg/dlを超えてもすぐに痛風になるわけではありません。

じつは痛風は、高尿酸血症の状態が5~10年経過したあとに発症します。

そもそも痛風は、結晶化した尿酸が関節部分などにたまり、それを免疫細胞が攻撃することで、痛みや腫れなどの炎症が起こります。

とはいえ、少しくらい体内に尿酸が蓄積しても痛風の発作は起こりません。

5年10年と少しずつ蓄積されてから、ある日突然、痛風が起こるのです。

ちなみに、痛風は夜中から明け方に発症する場合がほとんど。睡眠中に骨が折れたと思うくらいの激しい痛みに突然襲われます。

今や男性の5人に1人が痛風予備軍だと考えられています。尿酸値が高い状態を放置してはいけません。

痛風を繰り返すと、関節や骨が変形する

痛風を繰り返すと、関節や骨が変形する

また痛風は歩けないほどの激しい痛みに襲われるものの、痛みのピークは2~3日。1週間もすれば嘘のように痛みは消えます。

そのため生活習慣を改めることなく、痛風を何度も繰り返してしまう人も。

しかし痛風を何度も繰り返すと、少しの飲酒やプリン体の多い食品の摂取でも発症するようになり、痛風を発症する期間が短くなります。

痛風は足の親指や足の甲、ひざなどの関節部分に起こりやすく、同じ場所に何度も発症するうちに関節や骨が傷つけられて、変形する場合もあるのです。

さらに皮膚の下に結晶化した尿酸がたまると、「痛風結節」と呼ばれるこぶができます。こぶに痛みはありませんが、関節が曲がりにくくなる危険性があります。

また関節部分だけでなく、結晶化した尿酸は腎臓にも付着。腎臓の機能が低下して、老廃物や余分な塩分などが排出されにくくなります。

さらに尿酸の結晶が尿道や膀胱にたまると、痛風よりも激しい痛みが生じる尿路結石を引き起こすのです。

他にも痛風患者の半数は高血圧や、血中のコレステロールや中性脂肪値に異常が見られる脂質異常症を併発しています。

痛風は生活習慣の乱れが深く関係しているため、他の生活習慣病のリスクを高めて、動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる危険な病気を招く恐れもあります。

痛み止めを飲むなどの症状を抑えるだけでなく、痛風を2度と起こさないように、毎日の食生活を見直すようにしましょう。

まとめ

痛風の痛みは1週間もすれば消えますが、根本的な問題は生活習慣を改めない限り、なくなりません。

痛風を防ぐには、「食べ過ぎ・飲み過ぎ」ないこと。プリン体が多い食品にだけ気を取られす、まずは腹八分の食事を習慣づけましょう。

また痛風の心配がない人も、尿酸の排泄を促す牛乳やヨーグルトを摂取して、さらに痛風のリスクを下げていきましょう。

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