サプリに健康効果は期待できない?サプリの過剰摂取はがんリスクを上げる
自分が摂りたい栄養素を思うままに補えるサプリメント。
しかし健康のためにサプリを摂取しながらも、本当に効果があるのか半
信半疑になっていませんか?
そもそもサプリは野菜や果物とちがって、一度に摂取できる栄養素の量や種類が多いのが最大の特徴。
そのため、特に摂取量には注意する必要があります。
体に良いと思って過剰摂取すると、がんや脳卒中などの命に関わる大きな病気が引き起こされる場合があるのです。
そこで、サプリの危険性や注意点について調べてみました。
また人気のサプリに含まれる栄養素の量も比較していますので、一緒に確認していきましょう。
サプリは本当に効果があるの?
まずサプリの効果ですが、残念ながらサプリには病気を治したり予防する効果はありません。
その理由はサプリはあくまで野菜や肉、魚などと同じ食品の1つだから。
そのため、薬のように病気や症状の改善に直接働きかける作用はありません。
ではサプリは何のために必要かというと、食事で摂取できなかった栄養の補助。
普段の食事で不足しがちな栄養素を補うのが、サプリの本来の役目です。
なお、サプリは他の食品よりも栄養素が高濃度で含まれているため、栄養成分を過剰摂取しやすい危険性があります。
特に、栄養バランスが偏っていないにも関わらずサプリを摂取している人や、サプリに依存している人は要注意。
体に必要とはいえ必要以上に栄養を摂取すれば、かえって体に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。
サプリの摂り過ぎは体に有害?
サプリによる栄養の摂り過ぎは、吐き気や下痢など症状がすぐ治まる軽度のものから、がんや脳卒中など命に関わる大きな病気まで、体にさまざまな影響を及ぼします。
ちなみに、2人に1人が何らかのサプリを摂取しているというアメリカでは、サプリによる栄養の過剰摂取によって、下記のような危険性がさまざまな研究で報告されています。
栄養素 | 過剰摂取による影響 |
ビタミンA (β-カロテン) | 肝機能障害 胎児奇形(妊婦のみ) 肺がん(喫煙者のみ) |
ビタミンE | 脳卒中 前立腺がん 総死亡リスク上昇 |
ビタミンC | 心筋梗塞 狭心症 |
カルシウム | 高カルシウム血症による 腎不全・軟骨組織の石灰化 |
ビタミンD | 高カルシウム血症 便秘 |
鉄 | 心臓や肝臓の機能低下 |
亜鉛 | 免疫力の低下 善玉コレステロールの減少 |
それではビタミンAから順番に見ていきましょう。
喫煙者や妊婦さんは、ビタミンAの摂り過ぎに要注意
皮膚や粘膜に欠かせないビタミンAは、過剰摂取すると頭痛やめまい、下痢、肝機能障害などを引き起こします。
特に注意が必要なのは、妊婦さんと喫煙者。
妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、胎児の心臓や肺、眼球などに奇形が生じる危険性があります。
なお、ニンジンやカボチャに多く含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変わる栄養素ですが、β-カロテンを過剰摂取しても胎児奇形は起こりません。
これはβ-カロテンが必要に応じてビタミンAに変換されるため、過剰にビタミンAが増えないからです。
ただし、β-カロテンは黄や赤の色素成分のため、過剰摂取すると皮膚が黄色っぽくなるので注意しましょう。
また、喫煙者の人がβ-カロテンを過剰摂取すると、肺がんの発症リスクが高まることが報告されています。
そもそもβ-カロテンは、活性酸素を消去する抗酸化成分の1つ。
動物実験では、がんの発生を抑制する作用も確認されています。
ところが喫煙者がβ-カロテンを摂取すると、肺がんや虚血性心疾患のリスクを高める場合があるのです。
なお、喫煙自体も肺がんのリスクを高める大きな原因です。
リスクをさらに高めないためにも、喫煙者はβ-カロテンが高濃度で含まれるサプリは避けましょう。
過剰なビタミンEは、がんや脳卒中のリスクを高める
ビタミンEもβ-カロテンと同じく、体内の活性酸素を消去する抗酸化力があります。
そのため活性酸素による体内の酸化を防止し、病気や老化を予防することが期待されています。
また以前までは、過剰摂取による健康被害は起こりにくいと考えられていました。
しかし近年の臨床試験では、ビタミンEを過剰摂取すると血液を固まらせる血小板の凝集が阻害されることが確認されています。
その結果、出血した際に血が止まりにくくなるだけでなく、脳卒中を引き起こす危険性があり注意が必要です。
ちなみに栄養素には1日に必要な摂取量とは別に、耐容上限量が設定されています。
耐容上限量とは、1日に摂取しても体に悪影響を与えないとされる上限値のこと。
ビタミンEの耐容上限量は650~900mg(年齢・性別により異なる)です。
ところが耐容上限量に達していない400mgを数年間摂取し続けた場合でも、前立腺がんの発症リスクが高まることが近年の研究で確認されています。
また、ビタミンEを1日267mg以上摂り続けると、総死亡リスクが上昇するという研究もあり、上限値に達していなくても体に危険が及ぶ場合があります。
ビタミンCにも過剰症がある
ビタミンCは水に溶けやすい水溶性ビタミン。
そのため余計な分は体外に排出されることから、過剰症は起きにくいと考えられています。
しかし、人によっては下痢や吐き気が起こる場合も。
また、閉経後の女性がサプリでビタミンCを1日300mg以上摂取すると、心筋梗塞などの心血管疾患が発症しやすくなることが確認されています。
ビタミンCは美容に良いともいわれていますが、ビタミンCによる美容効果は科学的に証明されていないので、過剰摂取は控えましょう。
カルシウムの摂り過ぎで、腎不全や認知症の初期症状などが起こる
カルシウムは骨や歯に欠かせないミネラルの1つですが、過剰摂取すると血中のカルシウム濃度が高まり、高カルシウム血症が引き起こされます。
高カルシウム血症の主な症状は、吐き気や脱力感、食欲不振。
症状が長引いたり重症化すると、カルシウムが肺や腎臓、血管壁に沈着し、動脈硬化、腎不全、軟骨組織の石灰化、見当識障害(時間や場所などが認識できなくなる認知症の初期症状の1つ)などが起こります。
他には鉄や亜鉛、マグネシウムなど、他のミネラルの吸収を阻害する作用も。
いくつかの研究では、前立腺がんの発症リスクとの関連も報告されています。
ビタミンDやカルシウムの過剰摂取は、便秘を招く
ビタミンDは、カルシウムの体内吸収を促進する作用があります。
そのためビタミンDの摂り過ぎは、カルシウムを過剰摂取した場合と同じく高カルシウム血症を引き起こします。
なお、骨の強化に欠かせないビタミンDやカルシウムは、骨密度が低下しやすい高齢者や閉経後の女性は、積極的な摂取が必要です。
ただ、ビタミンDやカルシウムの摂り過ぎは、高カルシウム血症や便秘の原因になる場合もあるので、サプリを利用する場合は必ず摂取量を守りましょう。
鉄分は過剰摂取に陥りやすい
赤血球をつくる鉄は、女性に不足しやすい栄養素です。
しかし鉄はほとんど体外へ排出されないため、サプリによる過剰摂取を起こしやすい危険性があります。
長期的に過剰摂取すると、心臓や肝臓などに沈着して臓器の働きを低下させるのです。
また、アメリカでは平均年齢62歳の女性約4万人を分析した結果、鉄分サプリの摂取量が多くなるほど死亡リスクが上昇することが確認されています。
過剰な亜鉛は、善玉コレステロールを減少させる
亜鉛は不足すると味覚障害や成長を妨げますが、過剰摂取すると吐き気や食欲不振、下痢、頭痛を引き起こすので要注意。
また過剰状態が長期になると、免疫力の低下や動脈硬化を予防する善玉コレステロールを減少させる恐れがあります。
以上ことから、体に欠かせない栄養素も過剰摂取すれば、さまざまな病気や症状を引き起こす危険性があります。
サプリは食品よりも高濃度で栄養成分が含まれているので、過剰摂取しないように摂取量には注意しなければいけません。
しかし、色んな栄養素をまとめて摂取できるマルチビタミンには、それだけで1日の必要量を超える栄養素がたくさんあるのです。
マルチビタミンは必要以上に栄養が含まれている?
それではマルチビタミンにどのくらい栄養が含まれているのか、確認していきましょう。
今回チェックするのは、下記3つのメーカーのマルチビタミンです。
- ネイチャーメイド
- DHC
- ディアナチュラ
なお、注意が必要な栄養素を分かりやすくするため、それぞれの製品に含まれる栄養素の中から、女性の1日の必要量を超えた栄養素と、先ほど危険性をお伝えした7点の栄養素だけに絞ってチェックしています。
そのため実際の製品には、表に載っていない栄養素も含まれています。
では、ネイチャーメイドから見ていきましょう。
【ネイチャーメイド】
栄養素 | 1日の 必要量 (女性) | マルチ ビタミン | マルチ ビタミン&ミネラル | スーパー マルチ ビタミン&ミネラル |
---|---|---|---|---|
ビタミンA | 700μg | 600 | 300 | 300 |
β-カロテン | - | - | 1800μg | 1800μg |
ビタミンD | 5.5μg | 5 | 5 | 10 |
ビタミンE | 6mg | 26.8 | 26.8 | 9 |
ビタミンB1 | 1.1mg | 1.5 | 1.5 | 1.5 |
ナイアシン | 12mg | 15 | 15 | 15 |
ビタミンB2 | 1.2mg | 1.7 | 1.7 | 1.7 |
ビタミンB6 | 1.2mg | 2 | 2 | 2 |
ビタミンB12 | 2.4μg | 3 | 3 | 3 |
パントテン酸 | 5m | 6 | 6 | 6 |
ビタミンC | 100mg | 300 | 150 | 150 |
カルシウム | 650mg | - | 200 | 200 |
鉄 | 10.5mg | - | 4 | 4 |
亜鉛 | 8mg | - | 6 | 6 |
セレン | 25μg | - | 50 | 50 |
クロム | 30μg | - | 20 | 20 |
※一部の栄養素だけを抜粋して掲載しています
表のとおり、どのタイプも1日の必要量を超える栄養素がたくさんあります。
なかでも「マルチビタミン」と「マルチビタミン&ミネラル」に含まれるビタミンEは、必要量の4倍以上。
過剰なビタミンEは脳卒中や前立腺がんをはじめ、総死亡リスクを高める恐れがあります。
また、セレンは脱毛や爪の変形、クロムは稀に呼吸器の障害を引き起こす危険性があります。
続いて、DHCです。
【DHC】
栄養素 | 1日の 必要量 (女性) | マルチ ビタミン | パーフェクト マルチ ビタミン |
---|---|---|---|
ビタミンA | 700μg | - | 770 |
β-カロテン | - | 5400μg | - |
ビタミンD | 5.5μg | 5 | 5.5 |
ビタミンE | 6mg | 10 | 6.3 |
ビタミンB1 | 1.1mg | 2.2 | 12 |
ナイアシン | 12mg | 15 | 13 |
ビタミンB2 | 1.2mg | 2.4 | 14 |
ビタミンB6 | 1.2mg | 3.2 | 13 |
ビタミンB12 | 2.4μg | 6 | 24 |
パントテン酸 | 5m | 9.2 | 4.8 |
ビタミンC | 100mg | 300 | 100 |
カルシウム | 650mg | - | 136 |
鉄 | 10.5mg | - | 2.3 |
亜鉛 | 8mg | - | 2.9 |
セレン | 25μg | - | 9 |
クロム | 30μg | - | 3 |
※一部の栄養素だけを抜粋して掲載しています
DHCも多くの栄養素が1日の必要量を超えています。
特に「パーフェクトマルチビタミン」に含まれるビタミンB群は、必要量の10倍以上。
ビタミンB群は水溶性のため、過剰分は体外に排出されるので問題ないとされる一方で、体内の活性酸素を消去する機能が低下するとも考えられていて、注意が必要です。
続いて、ディアナチュラを見てみましょう。
【ディアナチュラ】
栄養素 | 1日の 必要量 (女性) | マルチ ビタミン&ミネラル | 29アミノ マルチ ビタミン&ミネラル | 39アミノ マルチ ビタミン&ミネラル |
---|---|---|---|---|
ビタミンA | 700μg | 450 | 770 | 770 |
β-カロテン | - | - | - | - |
ビタミンD | 5.5μg | 3.5~8 | 5.5 | 5.5 |
ビタミンE | 6mg | 8 | 6.3 | 6.3 |
ビタミンB1 | 1.1mg | 1 | 1.2 | 12 |
ナイアシン | 12mg | 11 | 13 | 13 |
ビタミンB2 | 1.2mg | 1.1 | 1.4 | 14 |
ビタミンB6 | 1.2mg | 1 | 1.3 | 13 |
ビタミンB12 | 2.4μg | 2 | 2.4 | 2.4 |
パントテン酸 | 5m | 5.5 | 4.8 | 4.8 |
ビタミンC | 100mg | 160 | 100 | 100 |
カルシウム | 650mg | 234 | 96 | 96 |
鉄 | 10.5mg | 2.5 | 2.27 | 2.27 |
亜鉛 | 8mg | 2.34 | 2.94 | 8.8 |
セレン | 25μg | 7.7 | 9.34 | 9.34 |
クロム | 30μg | 10 | 3.34 | 3.34 |
※一部の栄養素だけを抜粋して掲載しています
ディアナチュラは他2つの製品と比べると、必要量を超える栄養素が少ないです。
ただし「29アミノ マルチビタミン&ミネラル」と「ストロング39アミノ マルチビタミン&ミネラル」は、肝機能障害や胎児奇形、喫煙者の肺がんリスクを高めるビタミンAが高濃度で含まれています。
さらに「ストロング39アミノ マルチビタミン&ミネラル」のビタミンB群の含有量は、必要量の10倍以上も多く含まれているので、過剰摂取には注意が必要です。
このように、サプリだけで1日の必要量を超える栄養素が数多くあります。
そのため、色んな食材をバランスよく食事で摂取できている人は、サプリでの栄養補給は必要ありません。
またサプリを摂取する場合は、他の栄養強化食品は摂取しないこと。
さらに栄養を過剰摂取することになるので、栄養成分が添加された食品を同時に利用するのは避けましょう。
では最後に、厚生労働省が摂取を推奨している葉酸サプリについて見ていきましょう。
葉酸サプリの安全性は、妊婦さんで確認されていない
厚生労働省は妊娠を希望する女性に対して、食品やサプリから葉酸(ビタミンB群の1種)を積極的に摂取することを推奨しています。
これは胎児の脊髄や脳に障害を引き起こす、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減することが目的です。
そもそも、葉酸は細胞や臓器の形成に欠かせない栄養素。
そのため母体が葉酸不足だと、胎児の体が正常に形成されない場合があるのです。
そこで神経管閉鎖障害の発症を予防する目的として、葉酸の摂取が呼びかけられています。
なお、葉酸の摂取が特に必要とされているのは、妊娠前から妊娠3ヶ月の間。
脳や脊髄など体の重要な器官は、妊娠してから3ヶ月の間につくられるため、妊娠前からの摂取が重要だと考えられているのです。
ちなみに推奨されている葉酸の摂取量は、1日400マイクログラム(0.4mg)。
葉酸の含有量が多いホウレン草でも、100gあたりに含まれる葉酸の量は110マイクログラムなので、毎日食品だけで葉酸を400マイクログラム補うのは大変です。
また食品に含まれる葉酸の吸収率は50%に対して、化学合成されたサプリに含まれる葉酸の吸収率は85%。
手軽に効率よく葉酸を摂取できるのは、食品よりサプリです。
しかし葉酸サプリを利用する場合は、細心の注意が必要です。
なぜなら、サプリの安全性は妊婦さんの体で確かめられていないから。
妊婦さんの体を使ってサプリの安全性を確かめることはできないため、サプリに含まれる成分が、妊婦さんやお腹の中の赤ちゃんにどう影響するかは明確ではありません。
実際に葉酸サプリを摂取した妊娠中の女性では、葉酸サプリに含まれる何らかの成分にアレルギー反応を起こしたという報告もあります。
そのため利用する場合は最初から規定量を摂取しないで、少量を摂取して体の反応を確認しながら利用しましょう。
またサプリに頼らず、日頃から色んな食品(下記参照)を摂取して葉酸を補うこともできます。
食品(100g当たり) | 葉酸(マイクログラム) |
---|---|
ご飯 | 3 |
インスタントラーメン | 12 |
インスタント焼きそば | 13 |
さつまいも | 46 |
フライドポテト | 35 |
アーモンド(フライ、味付け) | 46 |
ほうれんそう(ゆで) | 110 |
ブロッコリー(ゆで) | 120 |
アスパラガス(ゆで) | 180 |
青ピーマン | 27 |
カリフラワー | 88 |
切干だいこん | 99 |
キムチ | 45 |
バナナ | 25 |
イチゴ | 90 |
温州みかん | 24 |
キウィフルーツ | 36 |
あゆ(養殖焼き) | 38 |
まさば(水煮) | 14 |
鮭(焼き) | 40 |
さくらえび | 230 |
ほたてがい(生) | 87 |
生うに | 360 |
田作り | 230 |
肝臓、子牛(生) | 1000 |
肝臓、にわとり(生) | 1300 |
卵黄 | 140 |
牛乳 | 5 |
また薬を飲んでいる人は、必ず医師に相談すること。
サプリは食品よりも高濃度で栄養が含まれているため、薬の効果が抑制されたり体に悪影響を及ぼす場合があるので、独断で摂取してはいけません。
なお薬を飲んでいなくても、どんな成分がどのくらい含まれているか、必ず確認してから利用するようにしましょう。
まとめ
サプリはあくまでも、食事による栄養不足を補助するものです。
そのためサプリを利用する前に、まずは食生活を見直すことが大切です。
また栄養は不足しても過剰摂取しても、健康に良くありません。
サプリを摂取する場合は過剰摂取にならないように、食事で不足した栄養素だけを補うように上手に利用しましょう。